<社説>衆院選公示 沖縄の未来へ民意示そう


社会
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 第49回衆院選が19日公示される。

 9年近く続いた安倍、菅両政権の政治姿勢の総括をはじめ新型コロナウイルス対策や経済政策などが争点となる。沖縄は米軍基地問題や沖縄の施政権返還(日本復帰)から50年を迎える2022年度以降の沖縄振興計画の在り方が問われる。
 選挙は民主主義の根幹であり、民意を示す重要な機会である。有権者は沖縄および日本の将来を見据えた最善の選択を示してほしい。
 衆院選でまず問われるのは安倍晋三、菅義偉両政権の8年9カ月に及んだ政治姿勢だ。森友・加計学園や「桜を見る会」の問題を巡り説明責任を果たさず、政治を私物化したと批判された。森友学園を巡る公文書改ざんや相次ぐ「政治とカネ」の問題で政治への信頼が大きく揺らいだ。岸田政権によって問題が終わったわけではない。
 後手後手に回ったと批判された新型コロナウイルス対策も重要な争点だ。感染拡大に伴い多くの自宅療養者が出る中で、国民の暮らしと命を守る取り組みは十分だったのか。第6波への備えは大丈夫か。与党は総括を示し、野党は対案を示して競うべきだ。
 コロナで生活に打撃を受けた人たちへの支援は欠かせない。ただ与野党ともに分配政策が目立つ。財源や規制改革の議論と向き合わず、ばらまきに終始していないか。裏付けも含めた責任ある議論を通じて有権者の判断を仰ぐ必要がある。
 沖縄にとって最も重要な争点は、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設の是非だ。これまで県知事選、衆参両院選などを通じ辺野古新基地建設に反対の民意を示してきた。
 しかし、民意を無視した新基地建設の強行が続く。埋め立て海域に軟弱地盤が存在し工事完成のめどが立たないのに政府は18年12月に埋め立てのため土砂を投入した。沖縄戦の激戦地だった本島南部の土砂を埋め立てに使用する計画の是非も選挙で問われる。
 来年、日本復帰50年を迎える。衆院選を通じて22年度以降の新たな沖縄振興策を巡る政策論争をしてもらいたい。
 第2次安倍政権発足後2度実施された衆院選の投票率は60%を割り込んだ。前回17年の衆院選は53・68%だった。自民の小選挙区での得票率は48%だが、小選挙区の議席占有率は75%を占めた。2人に1人しか自民に投票していないのに4分の3の議席を獲得した。低い投票率が、1人しか当選しない小選挙区で一定の組織票を持つ自民党に有利に働いたとみられる。野党が割れたことも影響した。
 安倍「1強」政治は国民の政治不信を招いた。その結果、政治に期待しない有権者が増え低投票率につながったとしたら、民主主義の危機である。有権者の意思を国政に反映するため、自らの選挙権を行使してほしい。