<社説>米兵、本紙記者に銃口 取材への威嚇に抗議する


社会
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 在沖米陸軍が那覇軍港で実施した訓練で、基地フェンスの外から写真を撮影していた本紙カメラマンに兵士の1人が銃口を向けた。見解を問うと米軍は「武器は記者を指していない」として意図的に銃口を向けた可能性を否定した。当時、武器には弾薬は入っていない状態だったという。

 基地の外にいる報道カメラマンに銃口を向けることは、憲法で保障されている報道の自由に対する挑戦だ。米軍は意図的に向けた可能性を否定したが、民間地に銃口を向け、民間人に恐怖を抱かせたこと自体大問題である。
 弾薬の有無は民間人には分からない。仮に意図がなかったとしても威嚇と受け止められたことを重視すべきだ。銃口を向けた行為に抗議する。米軍と日本政府には真相究明と再発防止の徹底を求める。
 本紙カメラマンは那覇軍港のフェンス沿いで訓練を撮影していた。その際に兵士1人が銃を水平に保ったまま右から左に体を回転させ、記者と相対すると、銃口を向けたまま数秒間、静止した。
 米軍基地では市民の目に触れる場所での銃を使った訓練や、記者への取材妨害・威嚇行為などがこれまでも複数回確認されている。
 2001年の米中枢同時テロ直後、北中城村石平のキャンプ・バトラー入り口ゲート近くの国道330号沿いで、報道機関の記者が車を止めた際、警備兵が来て窓をたたき「手を挙げろ」と命じ、ライフル銃を突き付けた。
 浦添市の米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)でも05年と12年の訓練で、隊員らが隣接する国道58号側に銃口を向け問題になった。
 そもそも民間地の住民が恐怖を抱くような訓練は許されない。米軍は沖縄防衛局を通じて県に訓練実施を事前に通告していたが、武装するという情報は伝えていなかった。県民への配慮を欠いている。
 那覇軍港では2月にも、普天間飛行場所属のオスプレイの飛来を伴う訓練が実施され、武装した兵士が、デモ隊に見立てた一団から建物を警備する様子が確認されている。
 国はこのような訓練を、那覇軍港が浦添市に移設された後も想定しているという。言語道断である。住民に恐怖を抱かせる訓練はどこであっても即時にやめるべきで、今後も実施すべきではない。那覇軍港は日米で返還合意された基地だ。遊休化が指摘されてきた中で突然、訓練場にされていることも疑問だ。
 今年は沖縄の施政権が米国から日本に返還されてから50年となる節目だ。米軍は提供区域外である名護湾でヘリによるつり下げ訓練を先月に実施したばかりだ。日本復帰から50年たっても、米軍のやりたい放題を黙認している日本政府の姿勢を見る度に、多くの県民が「何のための復帰だったのか」との思いを抱いているに違いない。これ以上、米軍の野放図な危険行為を許してはならない。