<社説>子どもの貧困対策 「ゆいまーるの精神」発揮を


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 菜那

 有識者らでつくる「県子どもの貧困対策に関する検討会」が、「貧困対策推進計画(仮称)」に盛り込むべき施策案をまとめた。

 施策案には(1)ひとり親家庭への自立支援(2)深夜徘徊(はいかい)を防ぐための子どもの夜の居場所づくり(3)給付型奨学金制度の拡充(4)スクールソーシャルワーカー配置の充実-などが盛り込まれた。
 子どもは地域社会の宝であり、子どもの貧困は個人の問題ではなく社会の問題だ。施策案は貧困に苦しむ子どもたちに生きる力や夢を持たせるために必要なものばかりだ。
 検討会のメンバーは児童養護施設代表、子どもの居場所づくりなどに取り組む支援者、児童養護施設の出身者、小児科医らで、貧困の現場を肌で知る人たちだ。来年3月に決定される県計画の策定にあたって県は、検討会の「貧困対策の先進県に」とする提言を最大限反映させるべきだ。
 県が行っている「子どもの貧困調査」の結果は年内にも結果が出る。調査を踏まえ、実情に合った県計画づくりと、それに基づく実効性ある施策を展開してもらいたい。調査の継続実施も求めたい。
 県はもとより市町村レベルでも、貧困対策の専任部署が必要だろう。県と市町村などが情報交換する体制づくりも不可欠だ。就学援助の統一基準などを県が策定し、どの市町村でも等しく援助が受けられるよう仕組みを整えたい。
 県計画には貧困対策の数値目標も盛り込まれる方針だ。目標設定によって、対策の実効性をより高める効果が期待できよう。
 貧困対策は、子どもの成長過程に合わせた切れ目のない施策展開とともに、貧困の世代間連鎖を断ち切ることが何よりも重要だ。
 現金給付の拡大や、少ない自己負担で教育を受けられる施策の充実など、子どもへの社会的投資を増やすべきだ。無料の学習施設を補助するなど、子どもの教育を下支えしたい。税金を使って社会を支えられる大人に育てることが、私たち沖縄社会全体の利益にもなる。保護者への生活、就労、経済的支援などの拡充も図りながら、職業訓練や生活習慣の指導も進めたい。
 子どもの将来が生まれ育った環境により左右されない社会を実現するため、いまこそ行政・地域・企業・民間団体などが一体になって、沖縄の「ゆいまーる(相互扶助)の精神・心」を発揮する時だ。