<社説>臨時国会見送り 召集して説明責任果たせ


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 菜那

 政府、与党は秋の臨時国会の召集を見送る方向で調整に入った。安倍晋三首相の外国訪問が11月中旬以降に相次いで予定され日程が窮屈なことや、環太平洋連携協定(TPP)の国会承認案提出が年内に間に合わない見通しとなり、必要性が乏しいと判断したようだ。

 安全保障関連法の成立から1カ月がたった。政府は自衛隊の新たな任務の検討状況などを国会で報告すべきだ。野党は大筋合意したTPP交渉についての審議を求めている。徹底した秘密主義で交渉が行われたため、国民生活や農業などにどれほど影響を及ぼすのか不明な点が多い。交渉の経緯や農業対策の基本方針などを国会できちんと説明すべきだ。
 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設問題でも政府の対応をただす必要がある。知事の埋め立て承認取り消しに対し、政府が不服審査請求などの強硬姿勢を取り続ける法的論拠を示すべきだ。臨時国会召集の必要性が乏しいとは到底言えない。ただすべき問題は山積している。
 秋に臨時国会が開かれなければ2005年以来となる。重要政策を議論し、国民に説明する場である臨時国会を開かないのは極めて異例な事態だ。召集見送りには野党が狙う内閣改造による新閣僚の「政治とカネ」問題追及や未知数の答弁力を危惧しているとの指摘もある。
 初入閣した森山裕農相は談合で指名停止となった業者から献金を受けていたことが発覚した。島尻安伊子沖縄担当相は自身の顔写真入りで氏名が書かれたカレンダーを配布していたことが分かった。公職選挙法(寄付行為の禁止)に抵触するとの指摘がある。島尻氏は同法違反に該当しないとの見解を示し、ブログの記述に誤解を受ける表現があったと釈明している。国会でも十分説明する必要がある。召集しなければ野党からの「政府、与党のサボタージュ(怠業)」との批判に反論できないだろう。
 民主党など野党側は憲法上の規定も使って召集を求める構えだが、召集権限は政府側にある。与野党が国会の場で喫緊の課題について議論するのは当然のことだ。討論を通じて何が課題なのか、政府の方針はどうなのか、問題点はどこにあるのかを国民に伝えるのが国会だ。政府、与党は説明責任を果たすためにも早期に臨時国会を召集すべきだ。