<社説>第2次岸田改造内閣 派閥均衡でカラー見えず


社会
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 第2次岸田改造内閣が発足した。閣僚19人のうち14人を入れ替えたが、菅政権時代の閣僚の再起用などが目に付き刷新感は薄い。

 岸田文雄首相は当初は9月に予定していた内閣改造を前倒しすることで、急落する内閣支持率の挽回を企図したのだろう。ふたを開ければ党内勢力のバランスに配慮した派閥均衡が際立っている。国民が疑念を向ける世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員との関係についても、本気になって膿(うみ)を出そうという決意は見えてこない。
 岸田カラーはさらに後退した。何のために内閣を改造する必要があったのか意義は見いだせない。これでは政権浮揚は望みようもない。
 安倍晋三元首相の銃撃事件の容疑者の供述を皮切りに、霊感商法で社会問題を起こした旧統一教会と自民党議員らとのつながりが次々に表面化した。安倍氏の実弟の岸信夫防衛相や末松信介文部科学相ら岸田政権の中からも、旧統一教会との関係を認める閣僚が出た。
 旧統一教会と関わりが判明した議員は安倍派に多い。人事の刷新で旧統一教会との決別を明確にすることが、今回の内閣改造や自民党役員人事に求められたはずだ。
 しかし、関連イベントであいさつしたと認めた前経済産業相で安倍派の萩生田光一氏を自民党の政調会長に就けた。防衛相を退任した岸氏も安全保障担当の首相補佐官への起用となった。
 教団と関係を認めた7人の閣僚は交代したものの、結局は別の形で要職に残すという小手先の内閣改造だ。関係の清算とは程遠い。
 さらに問題は高市早苗氏の経済安全保障担当相としての入閣だ。高市氏は安倍氏と関係が近く、党総裁選でも安倍氏は高市氏を強力に支援した。その高市氏の閣僚起用は、党内保守派の歓心を買おうとする思惑が明らかだ。「戦後レジームからの脱却」を掲げた安倍政権の思想的な影響が残ることも意味する。
 岸田首相は、比較的リベラル色の強い派閥「宏池会」の出身だ。首相就任時には「新しい資本主義」を提唱し、安倍、菅政権下で格差を広げた新自由主義的な経済政策を転換する姿勢を見せていた。今や脱安倍色は影を潜めている。
 安全保障では米国の対中強硬路線に従い、防衛費増額や敵基地攻撃能力保有の議論を提起する。内閣改造で防衛相経験者の浜田靖一氏を再登板させ、国家安全保障戦略など3文書の年内改定など防衛力強化を強力に進めるとした。
 このまま突き進めば台湾海峡の緊張が増すなど、南西諸島が武力衝突に巻き込まれる危険性が高まる。防衛費増額より物価高騰に苦しむ国民生活の救済が優先だ。
 岸田首相は、安倍氏がまとめてきた保守勢力の支持をつなぎ留めることに血道を上げている場合ではない。国民の声に誠実に向き合うべきだ。