<社説>野球賭博拡大 警察に告発し捜査委ねよ


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 プロ野球巨人の野球賭博問題は新たに2選手の関与が明らかになる事態に発展した。日本野球機構(NPB)の調査委員会の中間報告で示された。巨人の調査では関与がなかったとされていた選手が一転して賭博行為を認めるなど、球団の調査の甘さも露呈した。

 賭博に関与したのは、最初に発覚した福田聡志投手に加え、笠原将生投手と松本竜也投手の2人で計3人となった。さらに調査では福田、笠原の両投手は野球だけでなく、マージャンやバカラでも賭けをしていたことが分かっている。
 そもそも野球賭博常習者の知人を福田投手に紹介したのは笠原投手だった。関与が最も疑われていた笠原投手は巨人の調査に「何度か野球の試合で賭けをしないかと誘われていたが、断っていた」と述べ、関与を否定していた。巨人は今月6日から全選手、全球団職員に継続的な聴取をしていたが、関与の事実をつかみ切れず、また調査内容を公表することもなかった。本人の言うままを信じるだけのおざなりな調査だったと言わざるを得ない。
 しかしNPBの調査委員会の調査は違っていた。3投手の携帯電話の電子メールを復元してやりとりを分析し、関与の事実をつかんだ。3人はメールを削除するなど証拠隠滅が疑われる行動に出ていたが、削除したメールも復元できるデジタルフォレンジックと呼ばれる方法でメールやファイルなどの記録を抽出したのだ。
 ここまで証拠をつかまれれば観念せざるを得ない。球団の調査には関与を認めていなかった2投手が賭博行為を認めたのは十分な調査結果を突き付けられたからだ。
 NPBの調査で関与を認めた2選手は発覚しなければうそを突き通して処分を免れようとしていたのだろうか。だとすれば、運動選手以前に社会人として厳しく問われなければならない。
 NPBは1カ月以内に調査の最終報告を取りまとめる。ほかに関与した選手がいないかなど徹底した調査で全容を明らかにしてほしい。ただ強制力のないNPBの調査にも限界がある。巨人は警察に相談しているというが、賭博罪関与なのだから相談ではなく、告発して捜査を委ねるべきだ。そして球界は不正と絶縁するためにも、選手への定期的な調査導入など多様で多重な再発防止策を進める必要がある。