<社説>警視庁辺野古投入 抗議行動の弾圧許されない。


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で、キャンプ・シュワブゲート前の抗議行動への警備活動に警視庁の機動隊百数十人が投入されることが分かった。現場では移設を阻止しようとする多くの市民が抗議行動に取り組んでいる。警視庁の機動隊投入が、こうした意思表示と表現活動を封じるための弾圧が目的ならば、断じて容認できない。

 政府は翁長雄志知事の埋め立て承認取り消しを「執行停止」にした上で、埋め立て本体工事の着手に踏み切った。本体工事が始まった10月29日からは連日、100人以上の市民がゲート前で抗議を続けている。
 30日には工事車両を止めるために路上に出ようとした男性が4、5人の警察官に押さえ付けられた。解放後に自力で立つことができず、救急車で搬送されている。警察官が男性の首元を足で押さえ付けていたとの証言もある。安全確保を逸脱した拘束があったなら問題だ。
 県警はゲート前の対応について「違法または危険な場合に市民に対して処置を行っている」と説明している。しかし現場ではこれまで、県警が説明する「処置」とは到底思えないことが起きている。
 ことし7月、ゲート前で抗議をしていた市民に対し、警察官が一人一人を指さしながら実名を呼び「採証」と発言して、部下に全員の顔写真を撮るよう指示した。「採証」とは警察が逮捕、摘発や裁判に備えるために証拠を集める行為を指す。さらに6月には機動隊の指揮官が市民に対して「犯罪者」と発言している。抗議行動を犯罪視して取り締まっていると受け取られても仕方ない。
 知事はことし1月、第11管区海上保安本部と県警本部の両本部長に対し「大変憂慮している。県民の安心安全を守ることを最優先にしてほしい」と異例の抗議と申し入れをした。
 政府は知事の承認取り消しを「私人」として執行停止を求め、その要求を同じ国が認めた。さらに代執行の手続きを進め、知事の承認取り消しを取り消そうとしている。沖縄の民意を無視することが法治国家のすることだろうか。圧倒的で強大な権力を行使して工事を強行する政府に対し、ゲート前の抗議行動は市民によるやむにやまれぬ最低限の抵抗だ。警視庁の機動隊によって弾圧されるようなことがあってはならない。