<社説>ミャンマー政変2年 暴力停止と民主化求める


社会
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 ミャンマー国軍がクーデターを起こし、事実上の国家元首だった民主派指導者アウンサンスーチー氏を拘束してから2年がたった。人権団体によると、クーデター後の死者は2700人を超え、自殺者や精神疾患者が増えている。

 国連安全保障理事会は昨年末、スーチー氏の即時解放や暴力停止、緊張緩和、国民の意思と民主的プロセスの尊重を求める決議を採択した。国際社会はこれを基に団結し、早期収拾に向けミャンマーに働きかけるべきだ。
 ミャンマー軍政権はクーデターから2年に合わせ、非常事態宣言を6カ月延長すると発表した。これにより今年8月実施予定だった総選挙の先送りが確実となった。スーチー氏は汚職などで懲役と禁錮を合わせて33年の刑期を言い渡され、解放の見通しはない。
 民主派でつくる挙国一致政府(NUG)は「市民の勢いは衰えない。テロリストの国軍による独裁を終わらせる」との声明を発表。一方の軍政も民主派が武装闘争を続けており「通常の状況ではない」と主張した。軍事衝突の長期化で苦しむ人々がいる。民主主義を重んじる体制への回復を早期に実現すべきだ。
 ミャンマーでは、1962年の軍事クーデターで独裁体制が続いた経緯がある。軍政は2003年、民主化案を発表し11年に民政移管した。軍政が民主化を容認したのは、国際社会で孤立し、欧米による経済制裁によって経済が低迷したからだ。この歴史からも国際社会が一致して対応することの重要性が分かる。
 しかし、先の国連安保理決議は、構成15カ国のうち賛成は12カ国で、中国とロシア、インドは棄権した。中国やインドはミャンマー国軍に影響力がある。国軍とパイプを持つ日本も含め人道上の責務がある。暴力状況の即時収拾を国軍に強く求めるべきだ。
 ミャンマー国内では闘争が長引くにつれ市民の疲労は色濃く、軍政への抵抗運動から離脱する動きもある。新型コロナ禍も追い打ちとなり、経済的な打撃が大きい。社会の混乱から、将来展望を描けない人々が増え、自殺者や精神疾患者が増加しているという。国際社会はこの事態を重く受け止めねばならない。
 しかしロシアのウクライナ侵攻に比べ、欧米の国益に直結しないミャンマー情勢への国際関与は薄い。日本政府は政変発生約4カ月後から在日ミャンマー人に在留を認める緊急避難措置を取っているが、いまだに措置を適用されていない避難民もいる。1年間の在留と就労を認め、生活費も支援されるウクライナ難民と比べて格差が大きい。ミャンマーからの避難民への人
道支援をもっと強めるべきだ。
 2年に合わせて那覇市でも国軍の支配に抗議する集会が開かれた。在沖ミャンマー人会が訴えた「ミャンマーが平和になるまで力を貸してほしい」という切実な声を人ごとで済ませてはならない。