<社説>警視庁機動隊投入 人権脅かす警備はやめよ


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 非暴力に徹した抗議行動に対する不当な弾圧だ。市民の人権を脅かす過剰警備は即刻やめるべきだ。

 名護市辺野古への新基地建設で、警視庁の機動隊100人余がキャンプ・シュワブゲート前での警備に初めて投入された。男性1人が公務執行妨害容疑で現行犯逮捕され、負傷者が救急搬送された。
 異常な事態だ。ゲート前の警備に対し、県公安委員会は9月の定例会で「今後も細心の注意を払って警備を行ってもらいたい」と求めていた。
 警備による不測の事態を県公安委は懸念したのである。警視庁の機動隊投入は、まさにその懸念通りの過剰警備にほかならない。
 新基地建設の阻止を訴える市民の抗議行動は、戦後70年も生命・財産を脅かし続ける基地の重圧から脱したいという県民要求に基づくものであり、憲法が保障する表現の自由に照らしても正当だ。
 ゲート周辺での座り込みやデモは、新基地建設を強行する安倍政権に対する最低限の異議申し立てである。それを威力によって封じ込める行為は許されない。
 男性逮捕も疑問だ。本紙や市民が撮影した動画を見ると、先に機動隊員の手が男性の背後から伸び、バランスを崩した男性が機動隊員の方を向いて右足を上げるような動作をしているのが確認できる。
 市民逮捕の原因をつくったのは誰なのか厳しく問われるべきだ。市民をいたずらに挑発し、とっさに抵抗してきた市民を公務執行妨害容疑で逮捕するような理不尽があってはならない。
 現場では歩道上を鉄柵で囲った場所に、ゲート前から排除した市民を一時拘束するような事態も続いている。いったんゲート前から排除した市民を引き続き拘束するのは「予防拘禁」とも言うべき不当な行為ではないか。
 高江ヘリパッド通行妨害訴訟に関わった横田達弁護士は「令状もなく1カ所に閉じ込めることは法律から逸脱している」と批判した。法的に疑義がある警備を放置してはならない。
 そもそも、県が埋め立て承認を取り消したにもかかわらず、国が「私人」を装った不服審査請求や代執行着手などを通じて工事を継続すること自体、公正な法手続きを踏みにじるものだ。
 シュワブゲート前の異常事態を解消するためにも政府は直ちに工事をやめ、警視庁機動隊も沖縄から離れるべきだ。
英文へ→Editorial: Deployment of Tokyo riot police threatens human rights and must be stopped