<社説>辺野古停泊却下 環境破壊の不条理隠すな


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 一体、何を恐れているのか。

 名護市辺野古への新基地建設と表裏一体の環境破壊の不条理が、世界に発信されることを阻む政治的思惑があるとしか思えない。
 安倍政権は、国際環境保護団体「グリーンピース」によるキャンペーン船「虹の戦士号」(855トン)の辺野古沖周辺への停泊申請を初めて却下した。
 申請窓口となった沖縄総合事務局は「海上での抗議活動などに混乱が生じて安全確保ができない恐れがある」と説明したが、想定される具体的事例は一切示していない。根拠に乏しい恣意(しい)的通告だ。
 グリーンピース側は、安倍政権が新基地建設のために設定した臨時制限区域から約1キロ離れた沖合に停泊すると伝えていた。船長は「立ち入り禁止区域に入る意図は全くない。大浦湾破壊を隠蔽(いんぺい)しようとしている」と反発している。
 工事を妨げる意思がないことを明確にした上で、離れた海域で環境破壊反対をアピールする停船申請を退けた。大浦湾の広さ、制限区域と停船予定海域の距離からすれば、却下判断は過剰反応にほかならない。
 表現の自由、集会の自由を根本から揺るがす憲法違反のそしりを免れない異常な事態である。
 世界中の現場を巡る「虹の戦士号」が、停泊さえ認められなかったのは初めてという。
 グリーンピースは国連で非政府団体に与えられる最も高い地位のの一つ「総合協議資格」を持ち、総会を含む会議にオブザーバー資格で出席している。旗艦的存在の「虹の戦士号」の辺野古停泊は2000年の沖縄サミット、05年、07年にはすんなり許可されていた。
 非暴力の抵抗を続ける市民を拘束する過剰警備に加え、安倍政権は平和的手段を用いたアピールさえ封じ込み、開き直っている。
 果たして日本は民主主義国家なのか。狭量極まる姿勢は、国の体制や政策に抗(あらが)う国民の人権を抑圧する前近代的な独裁国家を連想させる。
 沖縄の民意を組み敷いて強行する新基地建設は大浦湾の環境を破壊する。日本の“恥部”に国際的関心が寄せられることを避けたいのだろうが、安倍政権の判断は逆に世界に恥をさらすことになる。
 「安全を脅かしているのは軍事基地建設を進める日米両政府だ」。世界基準の普遍的価値観を示す船長の言葉が核心を突いている。