<社説>パリ同時多発テロ 国際協調で暴力の連鎖断て


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 フランス・パリ中心部の劇場やレストランで銃乱射があり、郊外のサッカー場近くでは複数の爆発も発生、死者は計120人以上に上ったと伝えられている。負傷者も多数出ている。周到に計画された大規模な同時多発テロである可能性が高い。

 最悪の事態だ。卑劣なテロであり、許し難い行為だ。
 オランド大統領は「前例のないテロが起きた。断固として戦う」と非難、非常事態を宣言した。さらに事態沈静化まで国境閉鎖を明らかにした。
 全容はまだ不明だが、テロ実行犯らは「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んでいたとの証言がある。過激派組織「イスラム国」は「忠実な戦闘員らが堕落した都を攻撃した」との犯行声明を出した。
 犯人たちに法の裁きを受けさせなければならない。犯人特定と犯行組織の解明を急いでほしい。
 今回の事件はあらためて欧州全体でテロの脅威が深刻化していることを浮き彫りにした。フランス一国の問題ではなく、国際社会が共に断固として対応していくことが求められる。国際社会を挙げテロに立ち向かう体制を強化し、暴力の連鎖を断ち切らねばならない。
 欧州ではことしに入ってイスラム過激派のテロが続いている。1月にはパリの週刊紙本社への銃撃などで計17人が死亡した。2月にはデンマークで風刺画家らがいたカフェとユダヤ教会堂が銃撃され、市民2人が犠牲になった。
 背景には各国で受け入れてきた移民が一大勢力となり、これに極右勢力が反発するという状況が生まれていることがある。相互不信が深まる中、疎外感を味わう移民系の若者の一部が過激派に引き寄せられる悪循環が続いている。
 軍事的包囲網でテロを消滅させるのは難しい。イスラム国のテロリストは世界に広がっている。同組織を破壊すれば、テロがなくなるわけではない。生き残った兵士たちは別の関係国で、報復を繰り広げるだろう。
 テロ撲滅にはシリア内戦やパレスチナ問題の終結など、国際的に一致した体制で、政治面での解決に臨むことが不可欠だ。過激思想に感化されテロ組織に取り込まれる可能性があると指摘される移民系若者や難民への支援も重要だ。
 日本は国際的役割を強化していく必要がある。軍事と人道の中間と言える政治面での国際的役割を日本はもっと担うべきだ。