<社説>もんじゅに勧告 廃炉こそ時代の要請だ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」の名は釈迦如来の脇侍「文殊菩薩」に由来する。
 「三人寄れば文殊の知恵」ということわざ通り、知恵を出し合って安全、安定的な運用を図る名付けの趣旨とは全く逆の状況が続く。

 大量の点検漏れなど絶対的な価値である安全を二の次にした管理ミスが後を絶たない。原子力規制委員会は日本原子力研究開発機構の運営能力が欠如しているとして、別組織への運営移管を文部科学省に勧告した。
 半年をめどに別組織が見つけられない場合、もんじゅの在り方を抜本的に見直すよう求めている。見直しには当然廃炉が含まれる。
 失格の烙印(らくいん)を押された機構に代わる運営主体を見いだすのは困難視されている。もはや安倍政権はもんじゅの廃炉に踏み切るべきだ。
 もんじゅは、原発の使用済み核燃料からウランやプルトニウムを取り出し、燃料として再利用する仕組みだ。消費した以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」とされてきたが、1991年の試運転以来、事故やトラブルが相次ぎ、いまだに開発途上にある。
 通常の原発と違い、水分と激しく反応するナトリウムを冷却剤に使うため、操作が難しい。
 1995年のナトリウム漏れ事故で運転を停止し、2010年に14年ぶりに運転を再開したが、原子炉内に機材が落下する事故が起きて停止したままである。21年間の稼働日数は250日にすぎない。
 これまで約1兆円を投じたが実用化には程遠く、維持費などで年200億円が垂れ流されている。
 2012年には約1万に上る機器の点検漏れが判明し、13年5月には規制委から運転再開準備を禁ずる保安措置命令も受けていた。
 安倍政権は運営主体の変更を模索し、もんじゅ存続を図る意向だが、安全性への懸念に加え、必要性も薄らいでいる。国際的なウラン価格は安値で安定しており、経済的な開発根拠は乏しい。多くの先進国が開発から撤退している。
 勧告は遅過ぎるぐらいだが、福島第1原発事故の反省から生まれた独立機関である規制委が業を煮やして勧告に踏み切った。その重みを安倍政権は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
 半世紀近く安全を確立できず、実用化のめどが立たない技術開発に巨額を浪費し続けることに見切りをつけるしかない。もんじゅの廃炉こそ時代の要請である。