<社説>産科が減少 安心して出産できる環境を


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 産婦人科や産科を掲げている全国の病院が昨年10月時点で1361施設で前年比14施設減となり、現在の形で統計を取り始めた1972年以降、過去最少となった。24年連続で減少している。県内は産婦人科16施設、産科5施設の計21施設だった。本島北部では恒常的な医師不足が続いており、県内の医師確保も重要な課題だ。

 調査をした厚生労働省は減少理由について「少子化による出生数の減少や夜間・休日対応が多いなど厳しい勤務環境による産婦人科医の不足が背景にある」と分析している。
 県内では医師不足を理由に、県立北部病院の産婦人科ではことし9月まで医師2人体制での診療制限が続いていた。10月に新たに医師2人が赴任したことで約10年ぶりに定数4人体制に戻った。
 2005~07年は医師不足で休診に追い込まれ、08年以降は派遣医師などで一時的に4人だった時期もあるが、短期間で定数割れに戻っていた。北部では年間約千人の出産がある。12年度は県立中部病院への搬送が93件に上った。緊急を要する事態に陥った場合、北部地域から中部病院まで搬送されるのは妊婦にとって大きな負担だ。今後は医師4人の現行体制を何とか維持してほしい。
 県内の医師不足解消のため、県は本年度から保健医療政策課に医師確保対策班を設置した。14年度には北部・離島地区の医師不足解消のため20億円の基金を創設した。北部・離島で産婦人科医が開業する際には助成するなどの施策を展開している。今後も効果的な医師確保対策を進めてほしい。
 一方、日本産婦人科医会などの14年の試算では10年後の24年には26府県で産科医の人数が減少するという。一方で沖縄県は8・8%増加するとの予測になっている。いずれにしても地域にとって必要な医師の数を確保する必要がある。
 第3次安倍改造内閣は看板政策「1億総活躍社会」で、20年代半ばに出生率を1・8に回復させる目標を掲げた。若い世代の理想とする子ども数が実現した場合の「希望出生率」だ。14年は1・42だった。産み育てたいという意識が高まらなければ目標達成は到底実現できないだろう。
 少子化を食い止めるのには産婦人科の医師と施設を十分に確保することは不可欠だ。女性が安心して子どもを産める環境を整える施策を進める必要がある。