<社説>大阪維新の圧勝 「橋下流」と決別すべきだ


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 大阪府知事と大阪市長のダブル選は、橋下徹大阪市長が代表を務める大阪維新の会候補がいずれも圧勝した。

 大阪維新の会は橋下氏の強烈な個性で影響力を拡大してきた。政界引退を表明した後も続く橋下人気が大きな勝因といえよう。
 だが、橋下氏の政策が全て支持されたとするのは早計だ。大阪維新にとって最大の目標である「大阪都構想」も全面的に支持を受けたわけではない。
 当選した現職の松井一郎知事、市長選に初当選した吉村洋文氏とも、5月の住民投票で否決された都構想への再挑戦を掲げた。しかし今回のダブル選で大阪維新は「府民、市民の意見を聞いて制度案を作り直したい」と打ち出した。
 柔軟な姿勢に転じたことが有権者に受け入れられたとみるべきだ。住民投票で否決された都構想案は支持されていないのである。
 共同通信が選挙当日に実施した知事選出口調査では、最も重視した政策は「都構想の是非」(26・3%)、「医療・福祉政策」(23・3%)、「景気・雇用対策」(21・6%)の順だった。
 有権者は都構想だけでなく、暮らしに直結する政策も重視していたということだ。松井、吉村の両氏にはそのことを深く肝に銘じてほしい。
 他党や職員との関係も改善する必要がある。橋下府知事時代に単独過半数を占めた大阪維新は、入学式などの君が代斉唱時に教職員に起立・斉唱を義務付ける全国初の条例を成立させた。
 府教育委員会が異論を唱え、自民、民主、公明などが反対したが、橋下氏は「嫌なら4年後の選挙で維新の会(の候補)を落とせばいい」と突き放した。条例提出から10日足らずで、数の力で押し切るやり方はあまりに乱暴である。
 そのような「橋下流」の手法とは決別すべきだ。大阪維新は府議会、市議会の議席とも過半数に達していないが、議席数にかかわらず、他党の政策に真摯(しんし)に耳を傾ける姿勢を松井、吉村の両氏に求めたい。
 有権者は東京への一極集中が進む中、経済的に低迷する大阪の飛躍を望み、その実現を大阪維新に託した。求められることは、謙虚で丁寧な行政運営で課題を一つ一つ解決する姿勢である。それを基本にしたとき、有権者の期待に応える道は開けよう。