<社説>秘密法完全施行 やはり法を廃止すべきだ


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 指摘されてきた欠陥は何一つ解決しないまま、特定秘密保護法が1日に完全施行となった。いくら「悪法も法」とはいえ、これほど欠陥だらけの法がそのまま施行されてよいはずがない。一刻も早く法そのものを廃止すべきだ。

 特定秘密を扱う公務員は、扱う資格を有するか否か適性評価を受けることになっている。対象となる職員数が多いので、昨年12月の法施行段階で全職員の評価を終えることはできず、猶予期間が設けられた。その経過措置が終わったのである。
 9万7560人が対象だったが、何人が通過しなかったか、政府は公表しなかった。その不透明ぶりがいかにもこの法律らしい。
 だがその不透明性は、この法律の数多い欠陥の枝葉の一つにすぎない。より本質的な問題は、何が秘密なのかその具体的基準が国民に明かされない点だ。市民がそれと知らずに「特定秘密」に接近し、処罰されることもあり得る。
 戦前の宮沢・レーン事件を思い出す。旅好きの大学生が旅先で耳にした海軍飛行場をめぐる会話を、帰宅後に英会話教師に話して軍機保護法違反で逮捕され、拷問を受けて病死した事件だ。誰でも知っている軍の基地について話しただけで罪に問われた。そんな暗黒時代が再来しかねないという問題点は、全く改善されていない。
 指定基準が不透明なのだから、政治家や役人にとって都合が悪いだけの情報も特定秘密とされかねない。米軍基地をめぐっては、犯罪米兵を原則として罰しない約束や核持ち込みなど、うんざりするほど密約の連続だ。今後はこうした密約の有無を探ろうとするだけで罪に問われかねない。
 永久に秘密指定されかねないという問題点もそのままだ。原則30年以下とされる指定期間も、政府が「外国との交渉に不利益を及ぼす恐れ」があると判断すれば半永久的に指定可能だ。役人・政治家にとって都合の悪い密約は真っ先にここに分類されるだろう。
 民主主義にも国民主権にも真っ向から反する法と言わざるを得ない。「全ての情報に接近できる独立した監視機関」設置を求める国際原則(ツワネ原則)からも逸脱する、およそ国際標準に達しない法なのだ。やはり廃止するしかない。集団的自衛権行使を可能にした安全保障関連法と合わせ、法の廃止の是非を争点に国会を解散すべきだ。