<社説>「パリ協定」採択 地球守る合意履行に全力を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 地球の将来を左右する待ったなしの課題である温室効果ガスの削減に向け、国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)が世界の気温上昇を産業革命前に比べて、1・5度未満に抑えるよう努力することで合意した。

 新たな枠組みとなる「パリ協定」に大排出国である米国、中国、日本などに途上国を含めた190を超える全条約締約国が参加した。温暖化を食い止めるための歴史的転換点を刻んだ合意を評価したい。
 地球の温暖化防止は人類の将来を左右する重大問題となって久しい。海面上昇によって水没が危ぶまれる島しょ国などは、豊かな国の行為で貧しい国が被害を受ける「不正義」を訴えていた。
 合意の大きな柱は今世紀後半に温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする内容だ。増加一途の温室効果ガスをできるだけ早く減少に転じさせ、その後は急減させる。そして、人間の活動による排出量と森林などによる吸収量が並び、実質的な排出ゼロにこぎ着ける。
 さらに、途上国も含め、全ての国が5年ごとに削減目標を国連に提出し、対策を進めることが義務付けられた。
 途上国への資金援助をめぐっては、先進国に2年に1度の報告義務を課し、経済力が付いた新興国が自主的に資金を拠出できる。
 1997年の京都議定書は、排出量1位の米国の離脱を招き、中国やインドなどの工業力を付けた国に削減義務を課さず、実効性が弱かった。この反省を踏まえ、今回は2020年以降に法的拘束力を持つ枠組みが出来上がった。
 一方、合意を優先したことで削減目標に達成義務が課されていない面もある。定期的に削減幅を拡大し、実効性を保つ取り組みが重要になる。
 電力需給や日常生活でも続いた石油や石炭などの化石燃料への依存を世界的に改め、再生可能エネルギー導入を加速させることが欠かせない。
 主要国の活発なアピールに比べ、排出量5位の日本の存在感は薄かった。日本は30年までの排出量を13年度の水準から26%削減する目標を達成せねばならない。省エネ先進国として蓄積してきた技術を駆使し、社会全体で取り組む機運を高めてもらいたい。
 地球の環境を守る合意の着実な履行に向け、全参加国が全力を挙げることを強く求めたい。