<社説>再婚制限違憲判決 法改正で不平等の解消を


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 時代にそぐわない民法の見直しを迫る判決だ。しかし、女性には不利な規定が残ることになる。不平等の解消に向け、政府、国会は抜本的な法改正に取り組むべきだ。

 女性だけ6カ月の再婚禁止期間を定めた規定をめぐる訴訟で、最高裁は「再婚の要件で男性と女性を区別しており、合理的な根拠に基づかない場合、法の下の平等を定めた憲法14条に違反する」との判決を下した。
 女性の再婚禁止期間は、子どもの父親が誰なのかを決める「嫡出推定」を前提とした制度である。
 民法は離婚や夫と死別した日から300日以内に生まれた子は前夫の子、結婚後200日を過ぎた後に生まれた子は現夫の子と推定するとしている。推定の重複で生じる混乱を避けるため再婚禁止期間を設けたとされる。
 最高裁判決は、医療や科学技術が発達した今日、推定の重複を避けるには「100日で十分」だとし、それを超える期間は「結婚の自由に対する合理性を欠いた過剰な制約だ」と断じた。DNA検査の普及で父子関係の有無が容易に確認できる状況を踏まえた判決であり、一定の評価はできる。
 しかし、今判決で嫡出推定を要因とした問題が完全に解消するわけではない。出生届を出さないことによる「無戸籍者」の問題だ。
 法務省が確認した無戸籍者680人のうち、76%は前夫の嫡出推定を避けるために出生届を出さなかったことを理由としている。ドメスティックバイオレンス(DV)の問題が絡むケースが多い。
 再婚禁止期間を短縮しても、女性にとって不利な規定が存続することに変わりはない。今後も無戸籍者が生じる余地も残した。
 判決の補足意見は「子どもの父親が誰かをめぐる争いが起きないことが明らかなケースでは、離婚から100日以内でも再婚を認めるべきだ」という見解を示した。DNA検査の普及などで嫡出推定の存在意義は薄れている。廃止を検討すべきだ。
 判決を受け、政府は民法改正に向けた作業に着手する構えだ。
 法制審議会は1996年に再婚禁止期間を6カ月から100日に短縮する法改正案を答申したが、その後19年も放置された。その間、女性が被った不平等を考えれば政府、国会の責任は重大だ。
 家族観の多様化が進む中、法の下の平等をいかに保障するか、政府、国会は議論を急いでほしい。