<社説>廃船火災 放置船処理の協議を早急に


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 冬空に上がった大きな黒煙に驚いた人も多かっただろう。現場の状況を知り、さらに不安になった人も少なくあるまい。人を巻き込む大惨事にもなりかねない火災だったと言わざるを得ない。

 那覇市の泊漁港で17日午後に火災が発生した。木製のパレット(荷役台)が燃え、近くにあった廃漁船に燃え移り、所有者不明の15トンと19トンの2隻が全焼した。
 折からの北風にあおられ、火災はあっという間に燃え広がった。現場の近くには漁船燃料用の重油タンクもあった。消火活動によってタンクへの延焼はなかったが、もし引火していたらと考えると、ぞっとする。
 火災は1時間程度で大方収まり、18日未明に鎮火した。直接の原因は今後の検証に委ねられるが、今回特に問題視せねばならないのは、漁港の放置廃船に燃え移り火災が大きくなったという点だ。
 泊漁港では廃船が以前から問題となっており、県によると同港で19隻が放置されていた。今回の火災を受け、現場近くに事務所を構える漁業関係者からは「こういう問題が起きると、前から言っていた」という声が上がった。
 人身被害がなかったのは不幸中の幸いだったが、放置廃船をめぐっては災害時のこうした危険性に関する指摘のほかにも「停泊の邪魔になる」「放置船のロープが切れると船が損傷する」といった苦情や懸念が出ていたという。
 泊漁港だけではない。県によると、7月時点で県内漁港の放置廃船は市町村管理港を含めて実に632隻に上る。廃船処理が喫緊の課題であることは論を待たない。
 県はことし、廃船処理対策などの5カ年計画を策定した。2019年度までに県管理漁港に放置された廃船349隻のうち146隻を処分する目標を掲げている。
 県は水産庁とも調整し、漁港に廃船を放置させないよう放置禁止区域の指定など法制度についても検討している。だが所有者が不明だったり死亡していたり、所有者が分かっていても処理費負担が難しかったりといった問題が生じている。船舶は所有者の「財産」でもあるため、簡単には処分できないという事情もある。
 廃車処理などとも似通った課題があろう。今後さらに廃船が増えるような心配はないのか。行政や漁業関係機関などが早急に話し合い、解決策を見いだしてほしい。