<社説>高専の低周波音 国は早急に調査すべきだ


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 米軍機による騒音や低周波の実態をより詳細に調査すべきだ。

 名護市辺野古の国立沖縄工業高等専門学校の建物内部で観測された米軍ヘリによる低周波音が、環境省の基準値を上回っていた。騒音に詳しい琉球大の渡嘉敷健准教授の調査で明らかになった。
 同校の近くには米軍キャンプ・シュワブ内の着陸帯が複数ある。最も近い着陸帯と校舎との距離は約300メートルだ。上空は米軍ヘリコプターが日常的に飛び交う。授業をはじめ学生生活への影響が懸念されよう。
 調査ではCH53大型ヘリ2機による訓練時に基準値を超える低周波音が測定された。屋内では環境省が定める心理的影響の基準値を上回り、屋外では物などが揺れる基準値を上回って計測された。
 同校周辺では輸送機MV22オスプレイも頻繁に訓練しているが、同機はCH53よりも低周波音が大きい。渡嘉敷准教授らが昨年調査した普天間飛行場周辺では、オスプレイはCH53よりも最大で約30デシベル大きいとの結果が出た。
 30デシベル違えば体感のうるささは約8倍に相当するというから、かなりのレベルの低周波音や騒音の被害が常態化している恐れも否定できない。早急な調査が求められることは言うまでもない。
 シュワブ着陸帯での訓練をめぐっては離着陸の際に騒音が発生し、11月にも周辺住民が名護市を通して沖縄防衛局に苦情を訴えている。沖縄高専側も、2年前から県内他大学との連名で教育施設上空での米軍機訓練の中止を政府に求めてきた経緯がある。だが実態は改善されていない。
 辺野古には普天間飛行場の代替となる新基地建設も計画されている。オスプレイなど米軍機飛行による同校や周辺地域への影響は将来さらに深刻化することも強く心配される。
 辺野古の環境影響評価をめぐっては、オスプレイ配備などの重要な要素が最初の段階で明らかにされないなど、不備や欺瞞(ぎまん)性が次々と指摘されている。高専の周辺地区でのオスプレイの低周波音などの調査は不十分であり、新基地配備に伴う影響ははっきりしていない。
 民意を無視して進められる新基地建設の現行計画は、環境アセス面でもあまりに不備が多い。騒音被害の実態や将来予測に関する詳細な調査に政府は直ちに取り組み、明らかにすべきだ。