<社説>高校生の貧困 実効性ある支援進めたい


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 琉球新報と県高等学校障害児学校教職員組合が合同で実施したアンケートで、県立高校の教職員の28・9%が昼食や昼食代を持参できない生徒がいると答え、68・5%が教材費などの校納金が払えない生徒がいると回答している。

 家庭の経済力の低さを理由に、最低限の学ぶ環境が保障されない生徒がいる県内の「子どもの貧困」の実態が浮かんだ。学校だけでなく、行政、地域、家庭、関係機関などが連携して対策に取り組む必要がある。
 さらにアンケートでは、家庭の経済状況の厳しさを背景に、家計を助けるためにアルバイトをしている生徒が「いる」と答えた教師が77・7%に上り、92・3%の教師が「家庭の経済力が生徒の学力に影響する」と答えている。家庭の経済格差で生徒の未来に影響が出る事態は何としても解消しなければならない。
 県内の働く人のうち、年間所得が200万円未満の「働く貧困層」といえる世帯は24・7%で全国一高く、非正規雇用の割合も44・5%と全国1位だ。母子世帯出現率は全国平均の約2倍で、県内のひとり親世帯のうち、低所得者層が受給する児童扶養手当の受給率も全国1位の高さだ。子どもの貧困に結び付く状況の厳しさは沖縄が全国一といっていい。
 自由記述欄では生徒が経済的な事情で学習が妨げられ希望を断たれる姿に、教師が「やりきれない」「歯がゆい」との思いを記した。北部の高校教師は「本人の能力とは関係のないところで、進路の道が断たれることはあってはならない」と訴えた。同感だ。
 こうした現状を広く認識してもらうため、県は来年1月にも県内の子どもの貧困率を公表する。4月からは本格的対策にも乗り出す。政府も来年度沖縄関係予算で沖縄子どもの貧困緊急対策経費として10億円を計上した。貧困対策支援員を配置し、地域で子どもの貧困の現状を把握し、学校や学習支援施設、居場所づくりを進めるNPO(民間非営利団体)など関係機関との情報共有や支援を進める。実効性のある対策につなげてほしい。
 貧困家庭で育った子どもが経済的な理由で十分な教育を受けられず、大人になっても就労できなかったり、低所得しか得られなかったりする貧困の連鎖が問題となっている。家庭の事情で子どもたちの人生の出発点が違ってはならない。