<社説>新年を迎えて さらに平和希求を 子の貧困解決を最優先に


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 2016年を迎えた。ことしは平和についてあらためて考え、さらに希求する年にしたい。

 3月には集団的自衛権行使を可能とする安全保障関連法が施行される。自民党は17年に憲法改正の国会発議を目指している。安倍晋三首相は今夏の参院選後に改憲論議を加速させたい考えだ。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設も、この危険な流れと無縁ではない。
 この動きを止めることができるのは主権者たる国民である。ことしは参院選をはじめとする選挙の年でもある。平和について深く考えて投票することで、主権者としての責任を全うしたい。

大人の責務果たそう

 13年の沖縄全戦没者追悼式で、与那国町立久部良小学校の1年生だった安里有生(ゆうき)君が読み上げた平和の詩「へいわってすてきだね」にちりばめられた言葉の重みを、いま一度かみしめたい。
 「おともだちとなかよし」「かぞくが、げんき」「えがおであそぶ」
 その一つ一つが、日常の中にあることが平和なのである。戦争になれば、それが全て失われる。安里君は平易な言葉で平和の本質を表現した。そして「これからも、ずっとへいわがつづくように ぼくも、ぼくのできることからがんばるよ」と力みのない決意で締めくくった。
 平和を実感する社会を将来にわたって提供することは大人の責務である。まずは安里君のように「できることからがんばる」を実践したい。
 ことしは1月の宜野湾市長選を皮切りに県議選、参院選など重要な選挙が目白押しである。沖縄の将来が懸かった選択の年である。
 今、民意と政治のずれはあまりにも大きい。選挙はそれを正す絶好の機会である。安倍政権が沖縄の民意を踏みにじってはいるが、諦めてはならない。投票することで政治は必ず変えられる。
 各選挙では候補者の政策を吟味し、子どもたちが「えがおであそぶ」状況をより進展させるのはどの候補者なのかをしっかり見極め、大人としての子どもたちに対する責任を果たしたい。
 安保法制の成立過程で、SEALDs(シールズ)など全国の若者が声を上げたことは明るい兆しである。選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる改正公選法が昨年成立し、ことしの参院選から18、19歳の未成年者約240万人が有権者に加わる見込みである。若者が政治を変える核となることを期待したい。

放置できない現状

 安里君の詩の一節には「おなかがいっぱい」であることも、平和を象徴することとして挙げられている。沖縄の現状はどうか。
 琉球新報社と高教組が実施したアンケート調査で、県立高校の教職員の3割近くが昼食や昼食代を持参できない生徒がいると感じている。育ち盛りの生徒が昼食を抜かざるを得ない状況は、平和とは程遠い。
 小学生2人と幼稚園児の兄弟でとんかつを模した30円の駄菓子を3等分し、ご飯に乗せて「かつ丼」にするといった胸が痛む食卓がある。食事さえまともに口にできない子どもの存在を放置してはならない。
 県総合教育会議(議長・翁長雄志知事)は昨年11月、子どもの貧困対策を盛り込んだ県教育大綱をまとめた。県は4月から本格的対策に乗り出す。政府も沖縄関係予算で沖縄子どもの貧困緊急対策経費として10億円を計上した。
 教育の機会均等を図ることはもちろん、家庭での食事まで幅広く目配りすることが求められる。
 沖縄の将来を担う子どもたちは社会の宝でもある。貧困にあえぐ子どもを救うことは社会の務めである。
 子どもの貧困問題を解決し、全ての子どもが心身共に健全に成長できる社会の構築に、県民ぐるみで最優先に取り組みたい。