<社説>通常国会開会 辺野古と安保の強権を問え


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 夏の参院選に向け、山積する重要課題の論戦が展開される第190通常国会が召集された。だが、遅きに失した感を拭えない。

 安倍政権は昨年、95日も通常国会を延長し、安全保障関連法を強引に成立させた。国民の多数が反対する中、安倍晋三首相は野党が求めた臨時国会召集を拒んだ。国民への説明放棄と憲法軽視の禍根を残した。
 安保関連法は、日本が直接攻撃されなくても他国を攻撃する集団的自衛権行使を補強する。参院選勝利による改憲を狙う安倍政権は、安保法が参院選で争点化することを避けるため、自衛隊の活動の具体化を先送りする構えだ。
 違憲の指摘が根強い安保関連法の3月施行を踏まえ、憲法を変えることで帳尻を合わせるのか。国民軽視が際立つ選挙最優先の姿勢に道義的責任が問われよう。
 安倍首相の会見や外交報告では、安保関連法や名護市辺野古への新基地建設がすっぽり抜け落ちた。
 沖縄の圧倒的な反対世論、名護市長選、県知事選、衆院選の沖縄4選挙区での新基地容認派候補の全敗という結果を一顧だにせず、安倍政権は本体工事着工に走った。
 さらに翁長雄志知事の権限を剥奪して埋め立てを推し進める代執行訴訟まで起こした。知事は法廷で「日本に地方自治や民主主義は存在するのか」と訴えた。
 2000年の地方分権一括法施行から16年。国の下請け機関と位置付け、自治体に担わせていた機関委任事務が全廃され、国と自治体の関係は主従から対等・協力に改められた。しかし、辺野古新基地をめぐって沖縄県に牙をむく安倍政権の対応は憲法が定める民主主義、地方自治を破壊しかねない危うさに満ちている。沖縄だけの問題ではないのである。
 米国追従の外交・安保施策に甘んじつつ、強権性を強める安倍政権の姿勢を今国会で徹底的に議論してもらいたい。
 消費税再増税時に導入される軽減税率の1兆円に及ぶ財源は決まっていない。首相が「1億総活躍社会」への第一歩と位置付ける補正予算案だが、低年金高齢者への3万円給付へのばらまき批判も付きまとう。環太平洋連携協定(TPP)はその全体像がまだ見えず、国会での審議は尽くされていない。
 めじろ押しの重要課題をどう追及するのか。野党は知略を尽くすべきだ。