<社説>希羽ちゃん目標達成 移植治療の抜本的解決を

 県民の善意のバトンがつながった。重い心臓病で米国での心臓移植を必要とする翁長希(の)羽(あ)ちゃん(1)を支援する「のあちゃんを救う会」への募金額が3億5千万円余となり、目標額に届いた。今月半ばには家族と渡米する予定だ。手術の成功と希羽ちゃんが笑顔で古里に戻ることを願う。

 2001年以降、海外で心臓移植手術が必要として、県民の善意がつながったのは2001年10月に手術を受けた新崎進悟さん=当時(19)、11年4月の要美優さん=同(13)、15年2月の松島良生(らい)君=同(13)に次ぎ4人目となる。今回も互いに支え合う「ゆいまーる」の心が発揮されたことは県民の誇りだ。
 希羽ちゃんは生後すぐに「拡張型心筋症」と診断され、補助人工心臓を付けている。ただし人工心臓は長期間使用すると、脳梗塞など合併症の発症リスクが高まり、根本的な治療には心臓移植が必要とされる。「病院の天井しか見ていない娘を沖縄に連れてきたい」と願う父・司さんの願いは当然だ。渡米後、臓器提供者(ドナー)が見つかり、手術を受けるまで1~3カ月かかるという。早くドナーが見つかることを祈りたい。
 小さな命が救われることに安堵(あんど)するが、あらためて臓器移植の在り方も考えたい。海外での心臓移植を行う場合、最低でも億単位の費用が必要とされる。一般家庭でとても負担できる金額ではない。
 国内で移植手術を受けようとすれば、保険適用などで費用はある程度軽減される。しかし国内ではドナー不足という大きな課題がある。日本移植学会によると、国内で心臓移植を受けた人の待機期間は平均977日で米国の50日前後と比べ、20倍近い。一刻も早く移植を必要とする患者にとっては絶望的な長さだ。だからこそ高額費用を負担してでも海外での移植を選ばざるを得ない状況がある。
 15歳未満からの脳死臓器提供などを可能とする改正臓器移植法が施行され、提供者は増加したものの、一方で移植希望者も増加している。今後も長期待機患者が増えるのは確実だ。
 普段気に掛ける場面は少ないが、運転免許証や保険証の裏を見てほしい。臓器提供への意思表示を記入する欄があるはずだ。人々の善意をつなぐことも重要だが、身体的にも経済的にも負担の大きな移植治療に必要なのは何か。一人一人が考えるきっかけとしたい。