<社説>ジュゴン調査 有効な保全策へつなげたい

 絶滅が危惧されるジュゴンの保全に向けた十分な調査が必要だ。

 県環境部は2016年度から2年計画で国の天然記念物ジュゴンの実態調査を始める方針だ。沖縄本島の東海岸など周辺4海域で継続的に調査し、生息海域や頭数などを把握したいとしている。有効な保全策づくりにつなげたい。
 県による同様の調査は初めてだ。新年度の実施に向けて現在庁内で予算化を検討している。意義ある事業であり、ぜひ実現してもらいたい。
 ジュゴンは国際自然保護連合の絶滅危惧種にも指定される。保全が必要なことは論を待たず、さらに名護市辺野古の新基地建設事業で、生息環境がますます厳しくなることが強く懸念されている。
 ジュゴンは日本で沖縄周辺だけに生息している。沖縄防衛局の航空機調査などでは、辺野古沖や古宇利島周辺など本島北部沿岸域に少なくとも3頭が生息することが確認されている。ただその実態は明らかでない部分が多い。
 日本自然保護協会が14年夏に辺野古の建設予定地でジュゴンが海草を食べた跡などを調査した際には、2カ月足らずの期間で計110本以上の食跡が確認されている。防衛局は新基地建設に向けた埋め立て申請書などで「ジュゴンが辺野古地先の海草藻場を使用することは限定的」と結論付けているが、とても納得できない。
 同協会はジュゴンが建設予定地を餌場として頻繁に使っていることは明らかだとし、本格調査を求めたが、安倍政権はこれを無視して海上作業を強行した。同協会は「科学調査が実施されなければ、生態に関する科学的な知見と真実が永遠に失われる」と指摘している。現状を放置すれば少数の個体群そのものが消えてしまう可能性が否定できないのではないか。
 新基地建設事業に当たり防衛省は、ジュゴンの監視・警戒システムをつくり、生息状況を調べる計画だという。だがジュゴンなどの環境保全措置の作成に関与した専門家が、その保全措置について指導・助言する環境監視等委員会の委員を務めていた問題も先に発覚している。
 県環境部は目視や餌場確認を検討しており、複数箇所で季節ごとに調べる方針だという。新基地建設阻止に向けた県政のさまざまな取り組みと並行し、ジュゴン保全についても独自の調査や具体的なデータ収集を急いでもらいたい。



琉球新報