<社説>県環境再生方針 沖縄の未来創造する営為だ

 失われた自然を再生することは、地域の活性化を含め、沖縄の未来を創造することにつながる。

 県は開発などで劣化した自然を取り戻す自然環境再生事業に取り組む。モデル事業として東村の慶佐次川で赤土流出防止や緑化を進める。
 自然の「保全」「利用」に加え、「再生」を環境施策に位置付けた「沖縄21世紀ビジョン」に沿ったものだ。掛け替えのない沖縄の自然を守り、次代へ継承することを意図した新たな方針を評価したい。実効性のある施策を展開してほしい。
 今回の取り組みは1970年代以降、急激に進んだ自然破壊への反省を踏まえている。
 沖縄振興開発計画に基づく社会資本整備を軸とした振興策で復帰後の生活水準は向上した。半面、赤土流出による海洋汚染など、開発行為による環境悪化が社会問題となった。石油備蓄基地計画に対する公害反対運動も広がった。
 73年には県内識者が超党派で「沖縄の文化と自然を守る十人委員会」を結成し、乱開発に警鐘を鳴らした。「文化と自然破壊は沖縄喪失だ」と訴えたのである。
 これらの動きの中で、自然と調和を図りながら豊かな県土形成を目指すことが沖縄振興の中で求められるようになった。
 貴重な動植物の保護に向けた地道な取り組み、赤土流出を抑える土地造成の工夫はその一例だ。2000年代にはヨーロッパの実践に学び、県内河川で近自然工法が導入された。これらの経験の延長に今回の自然再生の方針がある。
 注目したいのは地域振興を事業の柱に据えた点だ。自然再生の施策を地域活性化とつなげることで、地域住民の機運を高めるという観点である。既に慶佐次川はエコツーリズムの実践がある。
 水俣病など国内各地の公害問題に携わり、沖縄の環境保全にも取り組んだ故宇井純沖縄大名誉教授は、70年代の公害反対運動が街おこしの性格を帯びたことを指摘した。自然を守り、地域特性を生かした地場産業を育てることが、地域の豊かさを支えるという教訓である。
 自然再生という視点に立った新たな環境施策は、地域再生に向けた取り組みを促すことにもなろう。慶佐次川の事業はその試金石となるはずだ。地域住民の理解と参画を通じて成功例を築き、県内各地に広げていきたい。



琉球新報