<社説>テロ頻発 武器禁輸体制の構築こそ


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 各国でテロが頻発している。インドネシアのジャカルタで14日、7人が死亡する爆弾テロが起きた。その2日前にはトルコのイスタンブールで自爆テロがあり、ドイツ人観光客ら10人が死亡した。

 いずれも過激派組織「イスラム国」(IS)が関与したとみられる。さかのぼれば昨年11月のフランス・パリの同時多発テロもそうだった。
 トルコやフランスの容疑者は難民を装うか、難民に紛れ込んでいた。このため難民受け入れ政策が岐路に立たされている。米国では大統領選に名乗りを挙げた人物が公然とイスラム教徒排斥を唱え、支持を集める。
 だが危機の真の要因は難民受け入れにあるのではなく、軍産複合体の膨張にあるのではないか。
 ISは、サウジアラビアなど湾岸諸国の住民から資金などの支援を受けてきたとされる。むろん支援の主体は諸国の政府ではないが、政府もそれを見逃してきたのではないか。そして米欧も湾岸諸国に大量の兵器を輸出してきた。
 パリ同時多発テロを機に米欧は一斉に湾岸諸国の住民によるIS支援を非難し始めた。だが米欧もそれまで支援への取り締まりを求めてこなかった。ISへの支援を放置しながら輸出してきたのだから、ISに武器が渡るのは当然の帰結である。武器を売るだけ売り尽くした後、非難するのは道理に合わない。
 なぜそんなことになったのか。今、各国の軍需産業は武器の共同開発などで連携を深めている。軍産複合体が国際規模の複合体となり、急速に勢いを増しているのだ。そしてそれへの文民統制は喪失しつつあるのが現実だ。脅威はテロ組織そのものよりむしろ、軍産複合体の膨張の制御に国際社会の良識が失敗している点にある。
 戦後のドイツはナチス台頭を許した歴史への反省から、差別や迫害に抗する人道主義を養ってきた。シリア難民の広範な受け入れなどはその成果である。だが今、一部難民によるテロや犯罪を理由に、その寛容な政策が批判にさらされている。米欧各国でも極右が台頭しつつある。
 このまま押し切られてしまっては、まさに「国際社会の良識の敗北」にほかならない。岐路に立たされているのは人類全体なのだ。
 軍産複合体を制御しよう。国際的な徹底した武器禁輸体制を構築すべきだ。それこそがテロの脅威の根絶につながるはずである。