<社説>イラン制裁解除 外交的解決の意義は大きい


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 歴史的な雪解けだ。イラン核開発疑惑を受け米欧が実施してきた対イラン制裁が解除された。イランが核開発を大幅に制限する作業を履行した結果だ。

 一時は軍事衝突さえ懸念された核兵器開発疑惑を外交で解決した意義は大きい。孤立していた中東の大国を国際社会に組み込んだのも大きな成果だ。核兵器不拡散の取り組みを強く後押しすることにもなろう。米欧・イラン双方の関係者の粘り強い努力に敬意を表したい。
 2002年、在米のイラン反体制派がイランの核兵器開発計画を暴露したのが発端だ。米国とイランは相手を「悪の枢軸」、「大悪魔」と呼び合って敵視した。
 06年には国連安保理がイラン制裁を決議、米国はイラン原油制裁法を制定し、欧州連合(EU)も原油禁輸を実施した。
 風向きが変わったのは13年にイラン大統領選で穏健派のロウハニ師が当選してからだ。同年11月には欧米など6カ国と暫定合意し、イランは濃縮ウラン製造を凍結、欧米は制裁の一部を解除した。さらに昨年7月には包括解決策で最終合意し、それに基づいてイランは遠心分離機や保有濃縮ウランの大幅削減、重水炉の炉心解体を履行していた。
 米国にもイランにも国内には強硬派が存在するが、融和への努力を貫いた両国政府の姿勢は高く評価したい。オバマ米大統領が「世界はより安全になった」と成果を誇ったのも理解できる。
 今回の制裁解除でイランは米国以外には原油を自由に輸出でき、凍結されていた国外資産約12兆円も一定程度は動かせるようになる。同国内の強硬派を抑える意味でも、疲弊したイラン経済の回復という成果を上げたいところだ。
 制裁解除は世界経済にとっても好機だ。人口7800万人を擁し、天然資源も豊富な同国は「最後の市場」と言われる。原油流通が増加して原油価格が下落し、産油国経済が悪化するとの観測もあるが、総体的に見れば大きな好材料となるはずだ。
 ただ、イランが核保有国になる危険性が絶無となったわけではない。この先、強硬派が政権を握れば振り出しに戻る恐れもある。米国は北朝鮮との間で枠組み合意を結んだが、検証体制の不備から核保有を阻止できなかった苦い教訓もある。後戻りしないような不断の検証体制を構築したい。