<社説>受動喫煙対策新法 厳格な分煙社会の一歩に


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 政府は、他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙の防止対策を強化する新法の検討に着手した。具体的な防止対策を取らない公共施設や飲食店には、罰則を科す方向である。

 たばこの煙にはニコチンなどの有害化学物質が含まれている。受動喫煙によって肺がんや心筋梗塞を引き起こすリスクが高まるなど、非喫煙者の健康を害することが報告されている。
 受動喫煙の防止対策強化は世界的な流れだ。多くの人が利用する公共施設や飲食店側が対策を取ることは、国民の健康を守る上からも重要であろう。
 2003年に施行された健康増進法は病院、官公庁施設、飲食店などの管理者に、受動喫煙防止に必要な措置を講じるよう求めている。だが努力義務にとどまっているため、十分な対策が講じられているとは言い難い。
 厚生労働省が14年に実施した調査によると、国内全ての約8500病院(ベッド数20床以上)のうち、敷地内を含めて全面禁煙にしているのは約5割しかない。
 患者や来院者の健康を守る立場にある病院としては、意識の低さは否めない。新法によって意識向上が期待できよう。
 一方で、一律に罰則を科せば資金力の乏しい飲食店などの切り捨てにもつながりかねない。分煙などに向けた費用を政府が一部補助したり、低利で長期貸し付けしたりする制度なども検討する必要があろう。
 問題となるのは、分煙するスペースのない狭い飲食店まで対策を課すかである。分煙や全面禁煙を求めた場合、そのような店が廃業に追い込まれる可能性がある。
 兵庫県の受動喫煙防止条例のように、認められた小規模飲食店が「喫煙可能」と表示し、受動喫煙になる場所であることを知らせるような仕組みも新法に取り入れる必要があろう。
 新法には非喫煙者の健康を守る観点から賛成する声のほか、罰則まで設けるのはやり過ぎだとの反対意見がある。
 受動喫煙防止対策が喫煙者と非喫煙者の対立を生むものであってはならない。国民一人一人が他人に配慮し、尊重し合う意識が何よりも求められる。
 新法の議論を非喫煙者と喫煙者それぞれの権利を保障する厳格な分煙社会構築に向けた一歩としたい。