<社説>春闘スタート 格差是正への転機にしたい


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 正規労働者と非正規労働者の格差をこのまま放置すれば、この国は「持続可能」でなくなる。社会そのものが崩壊しかねないのだ。

 春闘がスタートした。連合は正規と非正規、大企業と中小企業の格差是正を重視する姿勢を示した。ぜひ格差是正への大きな転機となる春闘にしてほしい。
 総務省の最新の就業構造基本調査によると、2012年時点で働く人の38%を非正規が占める。総務省の労働力調査では1990年時点の非正規の割合は20%だった。20年余で倍増したことになる。
 一方、国税庁の民間給与実態統計調査(14年分)で見ると、「1年を通じて働く」のに年収が200万円以下にとどまる層は24%に達する。1998年は17・5%だったから、働く貧困層は16年間で1・4倍に増えたことになる。厚労省の最新(12年時点)の国民生活基礎調査でも、相対的貧困率は調査開始以来最悪の16・1%に達した。
 非正規の増加と低収入層拡大は明らかに相関関係にある。現在の貧困問題の原因が、有期雇用の期間延長、労働者派遣の自由化など90年代後半に始まった労働法制改定にあるのは疑いない。
 それなら市場原理主義的な一連の改定の方向性を改めるのが筋だが、安倍政権が考えているのは逆だ。昨年成立した改正労働者派遣法は「一時的」としてきた派遣労働の原則を根本から変え、人を入れ替えさえすれば無期限にできるようにした。貧困問題をさらに悪化させる策としか言いようがない。
 大企業の内部留保は98年度に131兆円だったが、12年度は304兆円に達した。雇用を正規から非正規にして人件費を圧縮した分は内部留保に回ったのだ。
 非正規であるために将来に希望が持てず、結婚や子育てを断念する層が増えている。そんな現状は放置できない。政府が格差を拡大するなら、火急の策として民間ベースで格差是正を進めるほかない。
 同一労働同一賃金の原則に沿った非正規の大幅賃上げや正規職員化、先進国中最低水準にある最低賃金の大幅引き上げなどが求められる。その意味で連合が示した「誰もが時給千円」も妥当だ。内部留保を原資にできないか。そんな議論を深めたい。
 正規と非正規が一体で格差是正を進めれば、近年と逆の労働法制を政府や立法府に求める力にもなる。働く者の連帯が試されている。