<社説>石油製品値上げ 価格、供給の安定に全力を


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 消費者からすれば納得できない話だ。2月初旬にもガソリンや軽油の小売価格が上がる。プロパンガスやタクシー料金も4月以降に値上げが見込まれる。

 県内の石油製品の6割を販売する南西石油が、2月1日からガソリンや軽油、プロパンガス、ブタンガスなどの卸売価格を値上げするからだ。同社から石油製品を購入している国内大手元売りは2月6日から卸売価格を1リットル当たり5~6円値上げする。
 卸売価格の値上げ分が小売価格に転嫁されれば、車社会の沖縄にとって影響は大きい。本島より割高な離島はさらに深刻だ。好調な経済も影響を受けるだろう。
 国と県と南西石油は連携して、県民生活や経済活動へ影響を与えないように、安定供給に向けた対策のほか、石油製品価格の高騰を抑え、従業員の雇用安定に全力を挙げるべきた。
 南西石油が値上げに踏み切ったのは、同社の経営悪化にある。同社は昨年4月に石油精製を停止し、海外から石油製品を購入している。輸送費などの経費を価格に転嫁することができず、財務を圧迫していた。それならまず、親会社でブラジルの国営石油会社ペトロブラスが支援するのが筋ではないか。
 現在、原油の下落により国内の小売価格は6年9カ月ぶりの安値水準にある。原油安基調は当分続くとみられるが、沖縄だけ企業の都合によって原油安の恩恵を受けないのは不公平だ。
 ペトロブラスは昨年、南西石油の全株式を新たな経営者に売却し日本から撤退する方針を示している。売却交渉が難航する中で、南西石油は3月末で全ての石油製品の販売を終了する。暫定措置として4月以降、既存のタンクを元売り業社に貸し出す事業に乗り出す。だが、タンク使用料や輸送コストがかかり、石油製品への価格転嫁は避けられない。
 県はペトロブラスに対し(1)迅速な事業承継(2)事業承継完了までの安定供給(3)従業員の雇用確保-を求めた。短期的な対応として当然の要求であり、国も積極的に関わるべきだ。
 さらに国と県は中長期的な安定供給策を示してほしい。石油精製から販売までを担う企業の誘致、県と県内企業が出資する新会社などさまざまな選択肢があろう。一方、エコカーの普及促進などガソリンの依存度を低めることも大切だ。