<社説>清原元選手逮捕 違法薬物を追放しよう


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 球界で一時代を築いたスターの末路としては、あまりにも悲しすぎる。警視庁が覚せい剤取締法違反(所持)の容疑で逮捕した元プロ野球選手、清原和博容疑者のことだ。違法薬物の追放が社会的な課題となる中、影響力の大きい人物の逮捕は残念でならない。

 清原容疑者は、西武時代に4番打者として活躍、8度のリーグ優勝、6度の日本一に貢献した。
 歴代最多となるサヨナラ本塁打12本など勝負強さが魅力だった。打撃タイトルとは無縁で「無冠の帝王」とも言われたが、歴代5位の525本塁打は超一流の証しと言える。
 警視庁の捜査では、覚せい剤の所持に加え、自宅から注射器などが見つかっている。2014年に清原容疑者の薬物使用疑惑を指摘する週刊誌報道があって以降、1年に及ぶ内偵捜査があったとされる。入手経路の特定など違法薬物の根絶に向けて、今後の捜査で明らかにしてもらいたい。
 清原容疑者の逮捕は衝撃だが、芸能界、スポーツ界では度々違法薬物の使用が取り沙汰される。
 最近では元アイドルの女優や人気歌手、天皇賞を制した元競馬騎手らが覚せい剤所持や使用の疑いで逮捕され、有罪判決を受けた。
 こうした著名人はいずれも判決で常習性を指摘されたり、再犯で逮捕されたりしている。一度薬物を使用すると抜け出せない怖さがあることがうかがえる。
 覚せい剤など国内の薬物事犯は、2010年に約2万件が摘発された。14年は約1万8千件が摘発され、この5年間は減少傾向にある。しかし覚せい剤事犯の再犯者の割合(再犯率)は10年が59・3%だったのに対し、14年は64・5%に悪化している。
 県内でも2015年に違法薬物での摘発が167人となり、統計が始まった04年以降で最悪の結果となった。県内も覚せい剤での再犯率は15年62・5%で、14年から10・1ポイント増えている実態がある。捜査の厳正化や啓発活動と併せて、更生に向けた治療体制の充実も求められる
 昨年12月には熊本県で、男が3カ月の乳児に覚せい剤を投与して死なせる痛ましい事件があった。
 覚せい剤などの違法薬物は、熊本の事件のように、他人を巻き込み、社会に害をもたらす可能性を常に秘めている。清原容疑者の事件を契機にあらためて薬物の怖さを見直し、社会から根絶したい。