<社説>子の教育費 低所得者向け支援拡充を


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 低所得層の教育費負担を軽減させる取り組みが急がれる。

 沖縄振興開発金融公庫が2014年度の教育資金利用者の調査報告をまとめた。大学や専修学校などへの進学資金を借り入れた世帯で年収に占める入学費用の割合は59・9%に上った。離島では実に70・9%だ。教育費が家計を大きく圧迫している実態がうかがえる。
 低所得世帯はかなり厳しい。年収200万円未満世帯では教育費の割合が110・3%と、年収を上回る。離島に限ると129・3%にもなる。極めて深刻な状況と言えよう。
 資金利用者の平均年収は379万円余で、国の教育ローンを利用した全国調査の平均631万円余の6割にとどまる。沖縄は県民所得が全国最下位である半面、子どもの割合は全国で最も高い。所得格差が教育費の過重負担に直結していることは明らかだ。
 低所得者向けの教育資金支援を各方面で進める必要があろう。金融機関は金利優遇などを拡充させてほしい。家計管理支援などの取り組みも有効だが、何より求めたいのは返済義務のない公的な給付型奨学金制度の創設・拡充だ。
 少子化を背景に大学などの学費が高騰し続ける一方で、長引くデフレや非正規雇用の拡大などの影響で収入は伸び悩んでいる。学生の2人に1人が奨学金を利用していると言われるが、そのほとんどが貸与型だ。卒業と同時に、学生が数百万円の借金を背負うことが問題化している。
 教育支援施策について県は、高校のない離島から本島への高校進学者向けの寄宿舎を1月に開所した。新年度には県外大学進学者向けに給付型奨学金を創設する。
 こうした施策は評価できるが、まだ不十分だと言わざるを得ない。県内進学者向けの給付型奨学金をはじめ、困窮世帯への支援策などをもっと大胆に拡充すべきだ。
 今回の沖縄公庫調査では、所得が低くても子どもを大学などに進学させたいという人たちが沖縄は全国に比べても多いという傾向も表れた。ただ経済的な理由から進学を諦める人たちも相当数いるに違いない。
 沖縄と全国の大学進学率の格差は復帰した1972年に3ポイント弱だったが、2013年時点で15ポイントにまで広がっている。
 経済格差が教育格差につながるような状況を、一刻も早く是正しなければならない。