<社説>砲撃防音補助 過重負担感増す差別改めよ


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 不気味な地響きを伴う砲弾の炸裂(さくれつ)音は不快感を増す。沖縄戦体験者にとっては悲惨な地上戦の記憶を呼び起こす。その負の作用は県内では本土より増幅される。

 沖縄の米軍演習場の砲射撃音にさらされる周辺住民への差別的取り扱いが明るみに出た。
 米軍や自衛隊が使う県外の演習場周辺では、砲射撃音を軽減する住宅防音工事の全額補助制度がある。一方、県内の米軍基地周辺では砲射撃訓練や廃弾処理音に対する補助制度はなく、沖縄防衛局は騒音の実態調査も実施していない。
 国土の0・6%しかない県土に米軍がほぼ自由に使える専用基地の73・8%が集中する。その沖縄に対する安全保障政策の不作為は過重負担感をさらに強める。
 政府が繰り返す「沖縄の基地負担軽減」は名ばかりではないか。
 防衛省は沖縄への構造的差別を深める理不尽な不作為を一刻も早く改め、補助対象に加えるべきだ。騒音の実態も調べずにあからさまな二重基準を温存し、生活をかき乱す騒音被害の再生産に手をこまねくことは許されない。
 この事実は、キャンプ・シュワブ演習場を抱える名護市が、補助制度の有無を沖縄防衛局に照会して突き止めた。住民被害を極力抑える使命を果たそうとした攻めの基地行政を評価したい。
 防衛省は2008年、在沖米海兵隊の県道越え実弾砲撃演習が移転した北海道の矢臼別など県外の10演習場を対象に、補助金交付金要綱を定めた。砲射撃、爆撃による騒音の軽減を図る住宅防音工事を対象に補助金を交付している。
 沖縄防衛局が実施しないため、名護市基地対策室はシュワブ基地周辺で爆発音調査を続けている。毎月80デシベル以上の騒音を計測し、2015年2月17日には豊原区で実に106回も計測した。
 名護市は訓練中止や廃弾処理場の撤去を要請してきたが、放置されている。沖縄の基地周辺住民の人権が本土と比べて軽く取り扱われている表れだ。
 二重基準はまだある。在沖米海兵隊の砲撃部隊が遠征する演習場では、市民団体などへの説明会が開かれているが、県内では一切ない。
 なぜ県内は砲撃騒音対策の補助対象外なのか。防衛省は名護市の問いにまともな返答ができるだろうか。よもや「基地周辺住民の命の重さは本土より沖縄の方が軽い」と答えるわけではあるまい。