<社説>子の貧困対策計画 県民の参画が不可欠だ


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 「子どもたちの笑顔が増え、将来に夢や目標を持ち、それを実現する自信を持つ子どもたちが増えている」。県が素案をまとめた「子どもの貧困対策推進計画(仮称)」が目指す社会を一日も早く実現したい。

 計画は「子どもの貧困は自己責任論ではなく、社会全体の問題」と位置付けた。県ひとり親世帯等実態調査で、就労していない母子世帯の母親の40・7%が「自分が病気・障がいのため」に働けないと回答している。そのような実情を自己責任論で片付けていいはずがない。
 自己責任論否定は、社会は貧困に苦しむ子どもたちを見捨てないとの強いメッセージである。ごく一部であっても、弱者を置き去りにするような社会から脱却する上でも大きな意義がある。
 計画は妊娠期から子育て期にわたる支援をワンストップで行う子育て世代包括支援センターの設置促進、困窮世帯向け無料塾の全市町村への拡大、経済界の協力を得た雇用促進の仕組み構築など、ライフステージに応じた施策を盛り込んだ。子育て、学び、就労面で、切れ目のない支援の取り組みを打ち出したことを評価したい。
 計画は34項目の指標について数値目標を設定した。学用品費など必要な費用を援助する就学援助制度の書類を配布している市町村の割合は毎年度の進級時46・3%、入学時36・6%にとどまる。市町村が配布を徹底すれば解決できるようなものは、計画がスタートする4月から実施してほしい。
 関係者からは計画を評価する一方で、子育て支援コーディネーターの全市町村配置などを求める声がある。加藤彰彦沖大名誉教授が指摘する「県子ども貧困対策推進室」設置も必要だろう。
 県は外部有識者会議を設置し、取り組みを評価して定期的に見直すことにしている。関係者の意見を吸い上げ、計画をさらに充実したものにしてほしい。
 計画は国、市町村、教育・福祉関係団体、民間企業、NPO、ボランティアなどが連携・共同して取り組む体制の構築のほか、県民運動の展開を打ち出した。
 子どもの貧困は行政だけでは解決できない。県民の参画が不可欠である。子どもの貧困は「社会全体の問題」との計画の指摘を県民一人一人が重く受け止め、幅広い支援態勢を構築したい。