<社説>那覇港岸壁不足 機会損失を放置できない


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 那覇港への寄港を希望するクルーズ船は近年急増している。だが接岸する岸壁が不足しているため2015~17年の3年間で計85隻も寄港を断っていることが分かった。大きな機会損失である。

 このまま放置はできない。若狭ターミナルに続くクルーズ船専用岸壁(第2バース)の早急な整備が望ましいのは言うまでもない。しかし関係当局の調整が難航している。
 第2バース整備には那覇港の港湾計画を改定する必要がある。だがそのための調査事業費を盛り込んだ16年度一般会計予算案が問題を抱えている。浦添市が一部負担金の計上を見送る方針だからだ。
 浦添市は那覇軍港の移設予定地を北側から南側に変更して浦添ふ頭地区に観光交流拠点を整備するよう求めている。そのためには港湾計画の抜本改定が必要となる。
 これに対し那覇港管理組合は、先行きが見えない浦添市との協議を待たず、第2バース整備に向けた一部改定を優先したい考えだ。浦添市は抜本改定先送りを警戒し、計上を見送ったのである。
 県は、現在の那覇空港の国際航空貨物ハブを、航空だけでなく港湾貨物とも組み合わせ、単なる積み替えから加工などへも発展させたい考えだ。そのためには港湾物流の関連用地確保は不可欠である。軍港の南側移転はその用地を確保しにくくする問題をはらむ。
 一方、浦添市の案はクルーズ船バースと砂浜、マリーナをひとまとめにする構想だ。景観を考えると一理ある。双方に理があり、簡単に軍配を上げられる話ではない。
 結局、基地問題に行き着いてしまう。那覇軍港移設が観光面でも貨物ハブの面でも大きな妨げになってしまうのだ。基地が経済の阻害要因であることを象徴している。
 やはり軍港は県内移設すべきではない。那覇軍港は遊休化しており、必要な基地ではない。主に海兵隊が使っているが、そもそも軍事技術上も海兵隊が沖縄にいる必然性はないのだ。
 松本哲治浦添市長は13年の市長選で「軍港受け入れ反対」との公約を掲げた。受け入れは明らかに公約違反だ。南側移転案は公約違反のそしりを免れるためのつじつま合わせとの印象も消えない。やはり公約を貫くべきであった。
 ともあれ今は軍港と切り離し、クルーズ船バース整備を急ぐべきだ。軍港移設の是非はじっくり腰を据えて論議すべきであろう。