<社説>総務相「停波」発言 報道への介入をやめよ


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 安倍政権、自民党の体質がまた表れた。高市早苗総務相は8、9日の衆院予算委員会で、政治的公平性を理由に放送局の電波を停止する可能性に言及した。政権、与党が報道に圧力をかけるような行動は、これまでにも何度か繰り返され、そのたびに批判があった。

 安倍政権下では、衆院選を控えた2014年11月、自民が各放送局に「公平中立」を求める文書を送付した。15年4月は放送内容に関し、党情報通信戦略調査会がNHK、テレビ朝日幹部を事情聴取し、高市氏がNHKに文書で厳重注意した。同6月には党の若手勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告収入をなくせ」という暴言があった。
 今回の高市氏の発言も、こうした政権、党の姿勢の延長線上にあるとみられる。
 権力を持つ側が報道を統制・検閲すれば、国民に必要な情報が伝わらず、道を誤る。戦前の経験への反省があるなら、報道への介入など出てくるはずのない発想だ。憲法が保障する「表現の自由」を脅かすことがあってはならず、報道への介入などもってのほかだ。
 高市氏は歴代の総務相らも同様の発言をしていると指摘するが、発言の趣旨は全く違う。
 「表現の自由を制約したりする側面もあることから、極めて大きな社会的影響をもたらす」(2007年、増田寛也総務相=当時)「至って謙抑的でなければならない」(10年、片山善博総務相=同)。
 増田、片山の両氏は権限があることを認めつつも、行使には慎重な姿勢を示している。大臣の権限を前面に打ち出した高市氏の発言とは全く異なっている。
 高市氏は電波停止の前提として、放送内容の公平性に言及し、根拠として「政治的に公平であること」などと定める放送法4条を挙げ「単なる倫理規定ではなく法規範性を持つ」と語った。
 NHKへの文書注意でも高市氏は同様の主張をした。安倍首相らも同様の見解だ。しかし放送法4条の解釈については、専門家の間で「倫理規範」であることが通説とされる。自らに都合の良い解釈を振りかざし、報道への介入を正当化するかのような言動も見過ごせない。
 一大臣の発言撤回で済む問題ではない。表現の自由を脅かしかねない政権に対し、首相をはじめ政権幹部は、国民が厳しい視線を注いでいることを自覚すべきだ。

※増田寛也総務相の「寛」は目の右下に「、」