<社説>被災地未復興54% 震災の記憶持ち続けよう


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 東日本大震災に関して、共同通信社が岩手、宮城、福島3県の沿岸部に住み、津波などで避難生活を強いられた300人を対象に実施したアンケートで、地域の復興が進んでいないと捉えている人が計54%に上った。

 未曽有の被害、犠牲者をもたらした大震災から間もなく5年を迎える。政府は3月までの5年間を集中復興期間として約26兆円を確保、復興に取り組んでいる。だが被災者の期待と、ふるさと再生の進捗(しんちょく)状況に大きな隔たりがあることが、アンケートから浮き彫りになっている。
 復興を加速させ、あらゆる手段を講じて、被災各地域の実情と住民のニーズに合った生活再建、地域の再生を早期に成し遂げることをあらためて政府に求めたい。
 アンケートで、地域の復興が進んでいないと感じる理由として、高台移転など宅地や住宅整備の遅れが指摘されている。高台移転事業は昨年末時点で宅地造成完了が3県で約30%、災害公営住宅の整備も岩手、宮城両県は50%弱という状況だ。福島県は東京電力福島第1原発事故の影響で整備計画の策定自体が遅れている。
 宅地や道路の整備がもう少し早ければ、地元に残る人はもっといたのではないかという被災者らの指摘もある。今後もインフラや宅地整備の遅れが人口流出を深刻化させる要因になりかねない。スピード感を持って対応したい。
 このほかアンケート結果から分かるのは、被災者らは医療の充実、人口減少対策、地域の再生などを強く望んでいることだ。
 安全、安心な町に整備しても仕事がなければ人は出て行く。地域産業の再生も大きな課題だ。若者の流出が続けば町の活力が失われる。若者の雇用の場を優先的につくり、子ども向けの施策を充実させる必要がある。医療機関の整備も欠かせない。
 復興は、道路や港湾など生活基盤の復旧を迅速に進めつつ、地域のあるべき将来像、自立をきちっと考えた長期的目標を持って進めていきたい。
 5年という時間の経過とともに震災の記憶を「風化」させてはならない。国民の間に無関心が広がることを被災地の人々は恐れている。関心や理解が薄まれば、復興に影響が及ぶ。震災から5年目に入るのを契機に、被災地、被災者の現状に一層関心を持ち、何ができるのか、さらに知恵を絞りたい。