<社説>預金金利引き下げ 金融政策に長期的視点を


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 マイナス金利の影響が目に見える形で出始めてきた。全国の銀行が預金・貸出金利を引き下げる方向で検討しており、県内では琉球銀行と沖縄銀行が定期預金の金利を0・01~0・02%引き下げ、金利を0・03~0・04%とした。

 県内の他の金融機関も、預金金利引き下げを検討している。現状は大口預金などが対象だが、普通預金にも拡大すれば市民生活を直撃する。
 生活へのデメリットはあるが、メリットも考えられる。住宅ローンなどを含む県内3行の貸出平均金利は1・822%だが、国内平均は0・927%(ともに2015年12月)だ。競争により貸出金利も全国並みに低下すれば、生活への恩恵も考えられる。
 ただし銀行にとって貸出金利低下は収益悪化の一因となりかねない。東京商工リサーチの調べで、銀行預金に対する貸出金の割合(預貸率)は、2015年3月期決算で全国114行の平均が67・74%と6年連続で低下している。
 一方で県内3行の預貸率は60%台後半から70%台前半で、最近3年ではわずかながら増えている。好調な県経済を背景に、金利低下とかみ合えば、さらなる資金需要を掘り起こすことも考えられる。
 マイナス金利の影響がどう出るか不透明だが、少なくとも政策誘導の低金利が銀行の収益悪化を招いては本末転倒だろう。東京商工リサーチのデータが示す通り、企業はまだ設備投資に積極的でなく、銀行への影響が懸念される。
 日銀の黒田東彦総裁は好影響をもたらすことに自信を見せているが、見通しは甘いといえないか。
 15日に発表された15年10~12月期のGDPは年率換算で1・4%減。東証1部上場企業の純利益前期比増加率は、9月中間決算で想定した12・4%から急減し、3月期は4・4%となる見込みだ。
 低金利による住宅需要の喚起は考えられるが、過去最高とされる企業の内部留保が賃金として還元されてはいない。モノが売れず、業績も上がらない中、将来への不透明感もある。この状況でお金を借りたいと思う企業がどれだけあるだろうか。
 株価や為替の乱高下を見ても分かるように、世界の経済が密接につながり合う時代に、一国の金融緩和だけで状況を打破することは不可能に近い。悪影響が出る前に政府は内需拡大など長期的視点での政策を打ち出すべきだ。