<社説>丸山氏発言 議員辞職に値する放言だ


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 にわかには信じ難い発言だ。国会議員としての資質も疑わざるを得ない。辞職に値する放言だ。

 自民党法務部会長の丸山和也参院議員がオバマ米大統領について「今、米国は黒人が大統領になっている。黒人の血を引くね。これは奴隷ですよ」と述べた。発言後に「誤解を与えるような発言で大変申し訳ない」と陳謝したが、それで許される問題ではない。
 丸山氏は「米国は人種に関係なく大統領になれる国だと言いたかった」と釈明した。19世紀までの米国の奴隷制が念頭にあったようだが、オバマ氏の父はケニアから米国に留学した黒人で、母は米カンザス州出身の白人だ。奴隷の子孫ではなく、丸山氏は事実をはき違えている。
 何より黒人という事実と奴隷を結び付けている考え方自体が由々しき問題だ。根底に人種差別意識が潜んでいると言わざるを得ない。他国の民族に対する敬意を全く感じさせない言葉に憤りを覚える。
 丸山氏はさらに問題発言をしている。「日本が米国の51番目の州になることに、憲法上どのような問題があるのか」と質問、日本が米国に組み込まれたとしたら「集団的自衛権は全く問題ない。拉致問題すら起こっていないだろう。『日本州』出身が米大統領になる可能性が出てくる」と語った。
 この発言を「売国的」と言わずして何と言えばいいのか。立法府にいる人間が独立を否定するかのような発言をしたのは看過できない。
 丸山氏は発言をした参院憲法調査会の幹事と委員を辞任したが、議員辞職は否定した。「問題を引き起こしやすい発言をしたと反省している」と発言は撤回したが、「良心に恥じるところは何もない」などと開き直る姿勢も示している。
 丸山氏の発言に関して質問した野党議員に対し、自民党の長坂康正衆院議員は「言論統制するのか」とやじを飛ばした。今国会では閣僚の不祥事や失言も相次いでいる。不倫を認めて辞職した若手衆院議員の騒動もあったばかりだ。自民党議員らの「劣化」が目に余る。
 安倍晋三首相は丸山氏発言について国会で答弁し、謝罪は避ける一方、民主党議員による「首相の睡眠障害を勝ち取ろう」との発言を取り上げ、同党に反論した。与野党ともに身を正すべきは当然だが、党首としてまずは身内議員の放言に厳正に対処すべきだ。