<社説>株価続落 年金の運用比率を見直せ


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 株式市場の値動きが激しい。19日の日経平均株価(225種)は、円高進行を受け大幅に反落、節目の1万6000円を2日ぶりに割り込んだ。株価は年初からは依然3000円近く下げている。

 日銀が導入したマイナス金利政策の効果は見えず、乱高下が続く株式市場に、国民が積み立てた公的年金がつぎ込まれている。株式市場の活性化を図る安倍政権の意向を受けて、株式による運用比率を高めているため、今回の株安で損失が膨らんでいる可能性が高い。
 安倍晋三首相は15日の衆院予算委員会で、国内外の株価下落などで年金の運用が長期にわたって不調だった場合、年金支給額を減額する可能性に言及した。「想定の利益が出ないことになれば、当然支払いに影響する」と述べた。
 何という無責任な発言だろう。国民の老後の生活を支える年金を毀損(きそん)することは許されない。不安定な株式市場の動向に私たちの老後が振り回されないように、株式による運用比率を見直すべきだ。
 安倍政権は2014年、国民年金と厚生年金の積立金135兆円(15年9月)を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方針を見直した。投資先の基準割合として、国債を中心とした手堅い運用を60%から35%へ大幅に引き下げた。一方、運用益が拡大する可能性があるが損をするリスクも高い国内株式を現行の12%から25%に倍増させた。
 その結果、どうなったか。昨年の7~9月期の運用結果が7兆8899億円の赤字になった。このうち国内株式への投資で4兆3154億円も損をした。株式市場への投資はリスクが高いことを政府も承知している。昨年1月、リーマン・ショックのような株価暴落が再来した場合、約26兆2千億円の赤字になると試算しているからだ。年金基金の2割に相当する。
 公的年金の積立金は保険料を納めてきた国民の資産だ。積立金を運用する目的は「被保険者(加入者)の利益のため」と法律に書いてある。GPIFは「安全かつ効率的に」運用しなければらない。株式投資の比率を高めることは安全な運用に反するのではないか。
 GPIFは世界最大規模の運用資産を保有しているだけに国内市場への影響をできるだけ抑えつつ、債権と株の資産構成割合を見直し、出口戦略を打ち出すべきだ。