<社説>炉心溶融過小評価 東電の「闇」を徹底解明せよ

 東京電力は2011年3月に発生した福島第1原発事故当初の原子炉の状況をめぐり、極めて深刻な事態の「炉心溶融(メルトダウン)」ではなく、前段階の「炉心損傷」と説明し続けたことが誤りだったと発表した。

 当時の社内マニュアルに炉心溶融の判断基準が明記されていたにもかかわらず、事故後に全面改定され、かつて基準が存在したことを5年間も見過ごしていた。
 自分たちで作ったマニュアルなのに、5年も気付かない。しかも柏崎刈羽原発を抱え、事故対応を検証している新潟県の技術委員会の求めで調査を始め、判明したという。あまりにお粗末だ。
 原発周辺住民、国民にとって重要な事象が過小評価に基づき説明されていたことは極めて遺憾で、重大情報の隠蔽(いんぺい)にほかならない。
 炉心溶融か否かの判定は、事故対策や避難対策にも関わる重要なものだ。情報が正確でなかったことで住民の避難判断、事故対策などに支障を来した可能性もある。
 事故から2カ月後の11年5月、東電は詳しい解析の結果として1号機で大部分の燃料が溶けたと推定し、ようやく1号機の炉心溶融を認めた。
 それまでは、放射性物質の放出状況などから炉心溶融の可能性が高いと多くの専門家が指摘していたにもかかわらず「溶融を判断する根拠がない」と説明していた。炉心溶融という言葉を避け「炉心損傷」で押し通していた。
 事故発生の翌日、炉心溶融に言及した原子力安全・保安院(当時)の広報担当者が交代させられている。その後、政府や東電の担当者からは、炉心溶融に対し慎重な発言が目立つようになった。
 政府の事故調査委員会の聴取などで当時、東電や保安院に対し、記者会見での説明内容について事前調整を徹底するよう官邸から指示があったことが判明している。
 こうした状況を考えれば、深刻な事態を連想させる炉心溶融の認定を意図的に避けていた可能性さえ疑われる。
 これまで東電には社内情報共有や情報公開の不十分さを何度も見せられてきた。今回の説明にも不可解な点がある。第三者を交えた今後の社内調査には東電に対して批判的な人物を複数加え、経緯や背景、誰の指示だったのか、政治的圧力の有無など、東電をめぐる闇の部分を徹底的に解明すべきだ。



琉球新報