<社説>無保険証の子 確実に届ける責任がある


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 保護者が国民健康保険(国保)の保険料を滞納し、無保険になっている世帯の18歳以下の子どもに交付される被保険者証が、15市町村の84世帯125人に届いていないことが分かった。

 被保険者証がない場合、医療費は全額自己負担になる。市町村は対象者に一刻も早く届くように早急に対応してもらいたい。
 2008年9月の米証券大手リーマン・ブラザーズの破綻以降、世界経済は減速し日本経済は大幅に悪化した。非正規労働者らの人員削減が広がり雇用情勢も悪化した。親が生活に困窮して保険料が払えず、無保険になる子どもの医療費を捻出できないため受診を控えるケースが深刻化した。
 このため09年4月に国民健康保険法を一部改正し、中学生以下の約3万6千人には6カ月間有効の被保険者証が交付され、3割負担で受診できるようになった。だが高校生世代約1万人は対象外だったため、さらに法改正して10年7月から被保険者証が交付されるようになった。
 今回18歳以下の子どもに届いていない世帯が多い自治体は、那覇市が13世帯24人、沖縄市が11世帯16人、北谷町が12世帯16人、宜野湾市が10世帯14人、嘉手納町が9世帯18人などだ。
 県によると、被保険者証の交付方法は、家庭への訪問や郵送、窓口での交付などと自治体ごとで異なる。届いていない理由として、市町村は「世帯の居所不明」などを挙げているという。確実に届ける責任がある。その工夫が必要だ。親が制度を理解していない可能性もある。子どもが必要な時に必要な医療を受けられるよう、県と市町村は制度を周知徹底すべきだ。
 国保は低所得者や無職者など所得が不安定な被保険者を多く抱えている。県内で15年6月1日現在、一部でも国保の滞納のある世帯は3万9403世帯で全体の15・4%だった。
 しかし、子どもたちに滞納の責任はない。親は改正法に明記されている子どもの被保険者証を受け取る責任がある。市町村窓口に出向いてほしい。
 県は新年度から市町村と連携し、経済的事情で医療費の一時負担が困難な世帯を対象にした子ども医療費の貸付制度の導入を目指している。18歳以下の被保険者証と医療支援を組み合わせて、子どもの命を守る施策を強化したい。