<社説>集団自衛権全面容認 選挙で国民に信を問え

 安全保障関連法、自民党改憲草案の狙いが明確に見えてきた。

 1日の衆院予算委員会で安倍晋三首相は「日本国民の命を守り抜いていくために必要な国際法上持っている権利は行使できるとの考え方の下に、自民党草案を示している」と述べた。
 憲法を改正し、集団的自衛権行使を全面的に認める必要性に言及したものだ。首相の発言からうかがえるのは、安保法と自民草案は、日本を「戦争ができる国」にするということだ。断じて認められる話ではない。
 安倍政権は2014年7月の閣議決定で憲法解釈を変更。歴代内閣が禁じてきた集団的自衛権行使を一部容認した。15年9月には安保法が成立し、自衛隊の海外活動拡大に道を開いた。
 安保法の成立過程を振り返れば、国会審議で分かったのは、日本の存立が脅かされる明白な危険がある-などとした行使要件があいまいであり、米軍のイージス艦防護など際限なく行使が広がる可能性があることだった。制約なき集団的自衛権行使という懸念が、首相の発言で現実になったといえる。
 また首相は集団的自衛権の行使例として、中東・ホルムズ海峡でのイランによる機雷敷設を挙げ、その掃海作業を想定すると答弁した。しかしことし1月に米欧が核兵器開発疑惑に伴う制裁を解除し、イランは国際社会に復帰した。掃海の必要はなくなっている。
 イランはサウジアラビアと断交するなど不安要素はまだ残るが、制裁解除に至る過程を見れば、外交上の努力こそが実を結ぶ。武力介入は全く不要だ。
 首相はことしになって憲法9条改定への意欲を繰り返し訴えている。夏の参院選でも争点に掲げる意向を示していた。
 ところが自民党は16年運動方針原案を修正し、改憲に関し「参院選での訴えを通じ」の一文を削除した。党総裁である首相が争点化するとしながら、党方針は争点化しないという。
 経済政策を前面に出し、選挙が終われば安保政策も「国民の信を得た」と言い張る前回総選挙と同じ手法を繰り返すつもりなのか。
 昨年5月の県内世論調査は、7割が9条改正は必要ないと答えた。毎日、朝日、日経の世論調査でも改憲不要が多数派だ。9条を改定し、集団的自衛権行使を全面容認する必要があるのか。首相は堂々と国民に信を問うべきだ。