<社説>志賀原発「活断層」 廃炉の判断ためらうな


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 危険性を払拭(ふっしょく)できない中での再稼働は許されない。廃炉の判断をためらうべきでない。

 北陸電力志賀(しか)原発(石川県)の1号機原子炉建屋直下を通る「S-1断層」について、原子力規制委員会の有識者調査団が、地盤をずらす可能性がある断層(活断層)だとする最終判断を示した。
 今後は規制委が活断層かどうかを審査するが、北陸電は調査団の判断を覆す事実を提示できなければ、再稼働できない。廃炉を迫られる可能性が高まった。
 規制委が策定している新たな規制基準は、12万~13万年前以降に地盤がずれた可能性のある断層を活断層とし、真上に原発の重要施設を設置することを禁じている。
 調査団はS-1断層に関し「12万~13万年前以降に活動したと解釈するのが合理的だ」と指摘した。
 これまで調査団は現地調査を2度実施して地形や岩盤を検証し、その上で昨年7月にS-1断層が活断層である可能性を否定できないとの評価書案をまとめていた。その後、他の専門家による検証も受けたが、結論は変わらなかった。そうした経緯を踏まえた判断は当然ながら尊重されるべきだ。
 調査団は今回、1、2号機タービン建屋直下にある「S-2、S-6断層」についても「ずれが地表に及んでいないものの、活動した可能性がある」とした。2号機も大規模改修がなければ再稼働審査に合格できない見通しになった。
 だが今回の最終判断に対し北陸電は断層の活動性をあらためて否定し、再稼働を目指して審査申請する方針を示した。同社は昨年夏から評価書案について「科学的データに基づいた総合的な検討がなされていない」と反論してきたが、こうした説明は理解できない。
 志賀原発1、2号機は、2011年3月の東京電力福島第1原発事故の直前から停止しているが、これまで北陸電の電力供給に大きな支障は出ていない。同社は大規模な水力発電も持つことで知られる。見通しの立たない原発再稼働に今後も資金
を投入し続けるのなら甚だ疑問だ。
 福島原発事故で多くの犠牲を払って得た教訓は「安全最優先」という当然の大原則だった。関西電力高浜原発4号機のトラブルで分かるように、原発の安全に絶対はないことがあらためて浮き彫りとなっている。北陸電は廃炉に向けて判断を誤るべきではない。