<社説>米大統領選 「内向き志向」ではないか

 米大統領選挙の最初のヤマ場である「スーパーチューズデー」が終わった。共和党はドナルド・トランプ氏、民主党はヒラリー・クリントン氏の圧勝だった。両氏はさらなる優位を固めたことで、指名獲得が現実味を帯びてきた。

 米大統領は一国の元首にとどまらず国際社会の指導者としても重い役割と責任を担っている。指名争いは熱を帯びてきているが、トランプ氏の言動や動向に注目が集まるばかりだ。米大統領が国際社会の指導者の役割を担うならば、多極化する世界と向き合う中で、どのような国家像を描き、目指していくのか、肝心な部分の論戦が停滞している。
 現在の米国は、格差拡大による中産階級の消失など、社会の歪(ひず)みは限界に達していると分析されている。過激派組織「イスラム国」(IS)によるパリ同時テロなどの影響もあり、国内テロへの不安が高まっている。
 そうした社会状況の中、当初は泡沫(ほうまつ)候補扱いされていたトランプ氏が快進撃を見せている。イスラム教徒の入国禁止、メキシコとの国境に壁構築など排他的な発言で支持を広げている。
 主張はおよそ現実的でない。だが、不平や不安を感じる低所得の白人層らが共鳴し、そうした不安の発露が「米国を再び偉大な国に」と訴えるトランプ氏を支える原動力になっているのだろう。
 また「経済的にわれわれを殺そうとしている」「米国が攻撃を受けても日本は助ける必要はない。日米安保条約は不平等」など、日本へも過激発言を繰り返している。
 既成政治に対する怒りを追い風に、有権者の不安や不満を解消するための戦術で、被害者意識に火を付ける「ポピュリズム」の手法そのものだ。対抗するクリントン氏も政策の新鮮みに欠け、新しい米国像を打ち出し切れていない。双方とも「内向き志向」の選挙運動に終始してはいないか。
 米国が向き合うべきは内政課題だけでない。中東情勢への対応、対中国政策などの外交・軍事面をはじめ、景気動向、金融政策が世界経済に及ぼす影響も大きい。とりわけ外交・軍事政策は巨大な米軍基地を抱える沖縄にも大きく影響する。
 幅広く政策を論じ、東アジアや中東を含めた世界戦略を示すべきだ。本選へ向け、外交面でもさらに踏み込んだ政策論議が戦わされることを期待したい。