<社説>被災地の不安と疲弊 多様な支援を継続しよう


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 東日本大震災の被災者や復興業務に携わる行政関係者の苦悩が続いている。被災地の不安や疲弊を払拭(ふっしょく)する多様な支援が必要だ。

 東京電力福島第1原発事故で福島県から県外に避難を続けている18歳未満の子どもは約1万人に上っている。避難した子育て世代の間に原発事故への不安が根強く残っているためだとみられる。
 福島の避難者を受け入れている東京都が昨年実施したアンケートによると、地元に戻りたいと回答した避難者は25%にとどまった。多くの避難者は放射線への不安を含め、定住する環境が整っていないと判断しているためであろう。
 次代を担う世代が県外に流出していることは、福島の復興にとって大きな痛手だ。避難者が地元に戻り、安心して子育てができる環境を取り戻すことが必要だ。
 除染作業の加速化を図りながら、避難指示が解かれた地域では、子育てを支えるための基盤構築を急ぎたい。そして福島の復興を支える人材を育成するための環境を整えるべきだ。
 そのためにも財政と人的資源をそこに集中する必要がある。子育てと人材育成の施策は未来への投資であることは被災地も同じだ。
 大震災の発生から間もなく5年を迎える。放射線に苦しむ福島を含め、被災地は復興の途上にある。さまざまな復興業務が市町村行政を圧迫しているはずだ。ここで留意しなければならないのは職員の疲弊の問題だ。
 岩手、宮城、福島の3県39市町村で、うつ病などの精神疾患を理由に休職している職員は151人に上る。震災が起きた2010年度の1・6倍に増加した。不幸にも自ら命を絶った職員もいる。
 復興事業の負担増や原発事故への対応のストレスが背景にある。絶対的な人手不足の影響も大きい。これらの課題の克服に取り組まなければならない。職員の健康を守ってこそ被災地復興は着実に進む。
 被災者の生命財産に関わる業務に携わる職員はさまざまな摩擦にさらされているはずだ。健康相談や心的ケアを充実させたい。全国の応援職員の派遣も継続・拡充すべきだ。
 被災者や被災地支援は今後も多様かつ持続的であるべきだ。子どもの県外避難や職員の精神疾患の問題を見ても、被災地はさまざまな支援を求めていることが分かる。何ができるか議論を重ねよう。