<社説>広島・中3自殺 学校現場の体制を見直せ

 本来なら新たな高校生活を夢見て希望に満ちていたはずの中学生が、自ら命を絶っていたことが分かった。広島県で昨年12月に起きた事件だ。原因は学校側の指導ミスにあるという。あまりにもやりきれない。二度と事件を起こさないためにも、学校内の責任を追及し、体制を見直すべきだ。

 問題の発端は、亡くなった生徒が中学1年の時の生徒指導会議用資料の誤記だ。
 資料を作成した教諭が、誤って亡くなった生徒の名を万引したとして記入した。会議では間違いが指摘され、その場で資料は修正された。ところが保存された電子データ自体は修正されていなかった。
 誤った資料を基に、万引の指導歴があるから私立高の推薦ができないと学校側は指導したという。進路を話し合う三者面談当日に生徒は自殺した。
 疑問なのは誤記載があった資料の修正を確認することなく、保存したことだ。校長は担当者が決まっていないと説明したが、ならば管理職である教頭、校長の落ち度なのか、責任の所在が明確でない。
 担任教諭の対応も課題を残した。担任は当初の進路指導で、生徒に直接、万引の記録を理由に「推薦できない」と伝えたという。
 指導歴を理由に進路変更を求めるなら、直ちに保護者を交えて話し合う配慮が必要ではないのか。しかも生徒本人への事実確認は教室前の廊下で聞いただけだった。教育委員会の発表などによると、担任教諭は生徒が万引を否定したと認識していなかったというが、進路を閉ざすかもしれない問題について、学校が生徒、保護者と正面から向き合ったのか疑問だ。
 学校内の情報管理や子どもとの接し方に懸念を抱かざるを得ないが、事件が起きた背景には教員の多忙もあったのではないか。
 経済協力開発機構(OECD)の2013年調査によると、日本の教員の勤務時間は1週間当たり53・9時間でOECD参加国平均の38・3時間を大きく上回る。本来の業務に加え、生徒指導や部活動など教諭の仕事は多岐にわたる。こうした職場環境が子どもと接する時間を奪ってはいないだろうか。
 広島の事件は、第三者委員会で原因が解明される。二度と悲劇を繰り返さないためには、学校の責任追及のみにとどめてはならない。子どもと教諭が向き合える環境づくりも再考してもらいたい。