<社説>災害時対応 被災地の教訓学び策定急げ


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 未曽有の大災害から5年が経過したこの機会に、身の回りの災害対策を再確認しておきたい。

 東日本大震災5年に合わせ琉球新報社が県内41市町村に実施した防災対策に関するアンケートで、大地震や津波など災害時対応の課題があらためて浮かび上がった。
 高齢者や障がい者など災害時に手助けが必要な「要援護者」の避難支援体制をまとめた全体計画について、策定済みの自治体は26市町村、全体の63%にとどまった。2年前の調査では24市町村だ。支援計画策定に向けた動きは鈍すぎはしないか。
 要援護者一人一人の支援について定める「個別計画」は沖縄市と西原町しか策定していない。災害時の避難支援や安否確認に用いる要援護者名簿は策定済みが32市町村。2年前の27市町村より増えたが、未作成もまだ9市町村ある。
 家族や地域の絆が希薄化する中、要援護者名簿の活用方法について議論をぜひ深めておきたい。個人情報保護などの課題はあるが、いざという時には住民や市民団体なども含めて官民で広く情報を共有し、対象者の安否確認などを速やかに進められるようにしたい。
 計画策定の遅れについて市町村からは、人員不足や関係機関との調整停滞などを挙げる声がある。だがもし災害時の住民避難などに影響が出れば一体誰が責任を取るのか。自治体の長はぜひ指導力を発揮し策定を急いでほしい。
 アンケートからは観光客向けの防災・避難対策が進んでいない実態も明らかになった。観光客を対象にした避難訓練など何らかの防災対策をしているのは13市町村で全体の3割にすぎない。地域のホテルや観光協会などと協定を結んでいるのは7市町村だけだ。
 「観光立県」として現状では何とも心もとないと言わざるを得ない。外国人観光客の急増で災害時の外国語案内などの対応強化も急がれる。県と市町村や関係団体、各事業者らが協力して、緊急時における施設ごとの個別対応から避難計画の全体像までを体系的に取りまとめ、日ごろから確認することが必要だ。
 「私たちの経験を無にせず、普段から災害に備えておくことも沖縄の皆さんができることの一つです」。本紙などが主催した大震災・原発事故5年フォーラムに招いた被災地の関係者が話していた。被災地の教訓を学び、私たちの防災対策にもぜひ生かしたい。