<社説>新生ミャンマー 一層の民主化に期待する


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 1962年のクーデター以来、約半世紀にわたり軍人や軍出身者が政権を掌握していたミャンマーで、4月に文民の国政トップが誕生する。

 民主的に選出された文民主導の政府の誕生は歴史的な出来事であり、民主制移行に向けた大きな一歩だ。軍による圧政の下、長期にわたって粘り強く民主化を求め続けてきた国民と共に「新生ミャンマー」の誕生を歓迎したい。
 昨年11月の総選挙でアウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)は圧勝し、上下両院とも過半数を占めた。今月開かれた連邦議会ではスー・チー氏側近のティン・チョー氏が大統領に選出された。同氏は元経済官僚でスー・チー氏と長く行動を共にし信頼は厚いという。スー・チー氏は同氏を通じて新政権の実権を握るとみられる。事実上の「スー・チー政権」だ。
 文民大統領の誕生で民主化問題が完全に解決するわけではない。今でも多くの政治的特権を持ち、非協力的な軍をどうコントロールするのか、真の民主化に向けた闘いは新段階を迎えるにすぎない。
 新政権は省庁再編を通じ、国軍関係者の天下り先となっている閣僚や局長級ポストを削減するなど、行政改革に着手する。国軍の政治的特権を見直しつつ、民主化を着実に進める考えだ。期待したい。
 新政権が安定した国家運営をするためには、国軍との協力が不可欠だ。国軍は大統領選出を受け入れ「国の安定と発展のために協力を続ける」と声明を出している。しかし、新政権が強硬な姿勢で国軍と対峙(たいじ)すれば反発を招き、政治が不安定化する恐れもある。
 新政権、国軍ともに慎重に対話を重ね、ミャンマーの将来を見据えた関係構築と信頼醸成、国民融和に努めてほしい。政治的混乱につながる対立先鋭化は避けたい。
 新政権は少数民族武装勢力との和平など治安上の課題も抱えるほか、経済格差、遅れた地方開発などにも取り組まなければならない。
 民主政権を勝ち取った国民が次に望むことは豊かな生活だろう。日本としては、NLD主導の新政権と連携し、さらなる民主化と民主主義を定着させ、発展させるために、一層の経済支援・協力を行いたい。軍政下で遅れたインフラや法制度の整備、人材育成などの支援に官民を挙げ取り組むべきだ。