<社説>米キューバ関係 歴史的一歩 さらに前へ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 オバマ氏が米大統領として88年ぶりにキューバの首都ハバナを公式訪問した。ラウル・カストロ国家評議会議長との会談では、両国の関係正常化を前進させることで一致した。敵対関係にあった両国が対立から融和へと、歴史的一歩を踏み出したことを歓迎したい。

 2014年12月に両首脳が関係正常化への協議入りを発表して以降、ハバナは米国人訪問客を含む観光客でにぎわい、活気にあふれている。米ホテルチェーンも約50年ぶりにキューバ進出を発表するなど、米国にとっても新たな市場として見込める。
 対話を通した関係改善こそが、当該国にとって大きなメリットをもたらすということを実証したと言えよう。
 この流れをさらに進めたい。そのためには、カストロ議長が求める米国の経済制裁の早期完全解除を実現できるかが鍵となろう。米議会の承認が必要だが、野党共和党はオバマ氏がキューバの人権問題を置き去りにし、関係改善を進めたとして批判している。完全解除は見通せない状況にある。
 カストロ議長は米国との関係改善によって経済再建を加速させ、将来も社会主義を堅持できる道筋をつけることを狙っている。
 無料の医療や教育を提供するなど、この分野での社会主義政権の功績は評価したい。だが、キューバ国民が国の将来を自ら決める権利は保障されてしかるべきである。民主化を実現し、人権を保障することこそが米国との関係改善を早める道であろう。
 キューバは同国東部グアンタナモの米海軍基地の返還を求めている。だがケリー米国務長官は国交を回復した15年7月、キューバのロドリゲス外相との会談で「現時点で(現状を)変える考えはない」と述べ、返還を事実上拒否している。今回の首脳会談でも進展はなかった。
 この基地には収容者の虐待などで悪名高い収容施設がある。国連人権委員会が06年、この収容施設収容者の待遇改善を勧告したが、米国政府は公式に反応していない。米国では警官が黒人を射殺する事件も相次いでいる。
 米政府はキューバの人権問題を言うだけでなく、自国の人権状況も改善しなければ説得力はない。
 両国とも人権問題を解決し、歴史的な関係改善をさらに前進させてほしい。